109.見たい未来は、同じでも

「みんな、向こうを見て!」

洞穴の一番奥まで辿り着いたところで、パスカルがそう叫ぶ。
彼女が指差した先には赤い大輝石があった。目的地にたどり着いたのである。大輝石にはいくつものパイプと装置がつながっており、多くのフェンデル軍人によって囲まれている。その中にはカーツさん達もいた。
まさに今、大輝石の実験が行われようとしているのだろう。立派な髭を持つ人が何かを言ったのを合図に、大輝石に繋がっている機械が勢い良く動き始めるのを見て、わたし達は急いで駆け寄った。

「マリク……! お前、何故ここが」
「カーツ! これ以上実験を続けさせるわけにはいかん!」

カーツさんはしばらく目を閉じて、それから決意したように声高に宣言する。双槍を構えて、こちらへと駆け出した。

「侵入者だ。取り押さえろ!」

彼が向かってくるのを見て、即座に後ろに下がる。
相手はカーツさん一人だけれど、アスベルとソフィとヒューバートくんが攻撃を仕掛ける中で前線にいたら、わたしは正直邪魔なのだ。
わたしはヒューバートくんが後ろに下がった位置で後衛陣を守るか、後衛で輝術を放つ方がずっと役に立つ。まだまだ、練習中だけど、それでも前に出るよりはよっぽどマシだ。

「空破絶掌撃!」
「我が奮うは灰燼の剛腕、具現せよ! ブラドフランム!」

体全体を使うように二回カーツさんを吹き飛ばして、追撃を許さないようにパスカルが前方に炎の道を作る。
だがカーツさんはそれをなんとか防いで、近くで待機していた兵士が参加する隙を生んだ。

「ババリバリーッシュ!」

すかさずクロスサンダーを放って、兵士を遠くに吹き飛ばす。短縮した時の詠唱がいい加減なのはパスカル譲りだ。気にしないでほしい。
術を避けてしまった人には素直に剣で攻撃を加えて、とにかく彼らの気をそらすことに集中する。

「やぁっまだまだ! 霊子障断!」
「凍牙、其は非情の槍と化し殲滅の宴を開け! 凍槍、アイシクルペイン!」

ソフィの攻撃をサポートするように、マリクさんの氷の輝術が発動する。
それをまともに受けて、だがカーツさんはそれでも立ち上がった。

「くっ……! まだ終わらせん!」
「うわっと!」

カーツさんの攻撃は重い。
わたしは受け止める事が出来ずに素直に飛ばされる。
だが痛みを感じる前に、体力を大きく削られていたみんなを暖かな光が包んだ。

「みんなに届け、愛の煌めき……! ナース!」
「風牙絶咬! 月夜に沈め!」
「陵(みささぎ)、其は怒りの権化 その激情はすべてを揺らし葬る 絶対なる破滅! 爆壊、レ・ディスラプション!」

完全に足を止めたカーツさんに、マリクさんは輝術の詠唱を始めるではなく、普段はあまり使わない武器を構えた。

「始めるぞ! カーツ! 奥義! カラミティ・ロンド!」

炎を纏ったエッジを投げ飛ばして、カーツさんにぶつかった瞬間に破裂する。彼の、何もかもを込めた攻撃。
マリクさんが戻ってきた得物を掴む頃には、カーツさんはもう、立っていられない。崩れ落ちる中、彼は小さく、だが心の底から呟いた。

「……っフェンデルに、未来を……!」