ガクリと膝をついたカーツさんを見て、武器をしまう。
彼は負けたというのに、どこか嬉しそうにマリクさんを見上げた。
「マリク、強くなったな。昔は互角だったものを……」
「オレひとりの力じゃない。仲間がいたからだ」
「ああ! 大輝石が!」
一人の作業員が悲鳴じみた声をあげる。
見れば、大輝石が赤く発光し始めているところだった。どんどん強くなる光は、今にも破裂してしまいそうな不安定さを感じる。
「も、申し訳ありません。総統閣下のご命令で出力を最大にしたら……」
「大変……! 暴走が始まっちゃうよ!」
「装置を止めろ! 急げ!」
「だ、駄目です! 緊急停止機構がまるで働きません!」
なんのための緊急停止機構だ! と叫びたくなるが、どうやら大輝石と繋がっているパイプにも異変が起きてしまっているようだ。
ビリビリと火花が漏れているのを見て、焦りばかりが生まれる。
「こうなったら一か八か……大輝石と装置を結んでるパイプを!」
「あのパイプをどうにかするつもり? そんなの無茶だわ!」
「こうなったのはあたしの責任だもの。なんとかしないと!」
そう走り出したパスカルを、槍が遮った。
その持ち主であるカーツさんは、大輝石を見たままやんわりと、だが確固たる口調でパスカルを止める。
そして……走り出した。
「君にその役は任せられない。私に任せろ」
「カーツ!」
「うおおお!」
カーツさんの槍がパイプを貫く。
そこから漏れたエネルギーに彼の体が大きく痙攣したのが見える。目に見えて光が落ち着いていく大輝石に、だがカーツさんの体からはぷしゅーと黒い煙が出た。
ガクリと、膝をつく。
ズルリと、力無く体が傾く。
しかしパイプを貫いた槍に腕が引っかかって、倒れる事は許されない。言葉も無いまま、マリクさんは彼のもとへ走り出した。
「カーツしっかりしてくれ! カーツ!」
「……パスカルさんと言ったな……どうか君の手で研究を完成させてくれないか?」
カーツさんはゆっくりと目を開くと、駆け寄ってきたパスカルにそう微かに笑いかけた。
シェリアの治癒術が彼の体を包む。
だが、カーツさんの声からはどんどんあの強い意志に満ちた力強さがなくなっていくのがわかる。
「大輝石の制御は我が国の悲願だ……なんとしても研究は続けなくてはならない。君の研究が完成すれば、我が国は救われる……だから……どうか……」
「カーツ……」
「マリク……交代だ。ここから先は、お前に任せた……頼む……どうか、我が国の、未来を……導いてくれ……」
カーツさんが、マリクさんに向かって手をのばした。
嘗ての親友が、衝突した今も尚親友だと思っている彼に手をのばし返した。
その手は重なろうとして……届かないまま、ぽてりと、体ごと地に落ちた。
「カーツ! しっかりしろ! 死ぬな! カーツ!」
もう、彼は動かなかった。