あの後から二人はずっと無言のままで、わたしが話しかけなければ一切の会話が無くて。再びの気まずい空気に包まれながら歩くこと数分。ようやく目的地であるくラントの門が見えてきて、こっそりと安心してしまったことは許してほしい。
その頃には晴れていた空も随分と曇り始めていて、なんだか雨が降りそうである。
どこか薄暗い景色の中、ようやっとたどりついたラントの町は随分と……もちろんバロニアとは違う意味で騒がしい。慌ただしくて、落ち着かなくて。何かあったのだろうかと思った辺りで、シェリアがこちらに走ってきた短髪の男性に話しかけた。
「バリーさん?」
「シェリア大変だ! フレデリックさんが! フェンデル軍と戦っている時に囚われてしまったんだ!」
「おじいちゃんが……!?」
悲鳴を上げる代わりに息を飲むシェリアに、わたしはラントが思っていた以上に切羽詰まった状況なのだと改めて認識した。
まさか人質とかそこまで話が発展しているだなんて思わなかった。わたしはせいぜい武器を持って突き合っているようなイメージでいたのだから、認識が甘かったと言わざるを得ない。
「奴らめ、とうとうこのラント領に本格的に進行を始めやがって……!」
バリーさんとかいう素朴なところが魅力的な男性が、今にも壁か何かを殴りそうな勢いで声を絞り出す。
けれど、そうして悔やむのは少しだけだ。ぐっとこぶしを握り締めると、すぐにアスベルさんに向き合って、しっかりとした態度で頭を下げた。
「申し訳ありません、我々がついていながら。アスベル様、この件につきましては後でいかようにも責を負います。ですが、今は急いでフレデリックさんを救出に向かわなねば」
「私も行くわ。場所はどこ?」
「今は国境砦と裏山の間でもみ合ってる」
「わかった。すぐに向かいましょう」
「よし、俺も行く」
「あ、じゃあ私も」
二人の勢いにつられて手を上げてから、すぐにやめておけばよかったと思った。ご老人は大切にしないといけないし、助けようという気持ちに嘘はない。でも、ただの一般人。剣をふるったこともないわたしがついて行ったところで囮にもならないだろう。
でも、もう今更引き返せない。わたしたちを驚いたように見るバリーさんは、けれど何かを期待するように瞳を輝かせたのが見えたから、これ以上口を開くわけにはいかなかった。
「アスベル様? それにお嬢さん、しかし……」
「フレデリックをみすみすフェンデル軍の手に渡せるか! 行こうシェリア、シオリ!」