世界の中心の孤島、と呼ばれるそこはあまり広くはない。
三色の石をつかった門は綺麗だし、広間は孤島と呼ぶには整備されていたが……それだけだ。他に何かがあるわけではない。
ただ、門の奥にあるとても大きな穴……といっても蓋をされているせいでどれくらいのものなのかまったくわからない……が、その存在を強く主張しているだけだ。
「これが例の縦穴かな? 蓋されちゃってるね」
「リチャードは……まだ来てないみたい、だね」
きょろきょろと辺りを見回してみるが、わたし達以外の人影はない。
それにどこか安心して……でも、やっぱり不安は拭えなかった。
フェンデルの大輝石で聞いたリチャードの言葉が頭から離れなくて、思い出しながらソフィにしようとしたことを考えて、モヤモヤする。
わたし、わたし、何をしなくちゃいけないんだっけ。
「みんな! 空を見て!」
シェリアの声にバッと顔を上げると、丁度リチャードを乗せた魔物が降りてくるところだった。
ズザザッと音を立てて着地した彼は、全身を包むような赤黒いオーラのようなものを纏っていて、その足取りは怪しい。
ふらふらとしたそれは、今にも倒れそうなほどだ。
「リチャード!? その体は一体!」
「ウ……ウアアアアアアアアア」
「……!」
彼が吼えるように叫ぶと、赤黒い中に赤や緑、青といった、大輝石を連想させるような色が浮かぶ姿は、まるで原素を纏っているみたい、なんて。言葉の表現だけなら詩的にも思えるけれど、彼が浮かべる表情も何もかも、彼らしさを感じられない。
かつてのリチャードのあの優しげな雰囲気はどこにもなく、そのあまりに人間離れしたその様子はどこか恐怖さえ感じた。
「どうなっているんだ?」
「あまりに大量の原素を取り込んだせいで、体が耐えられなくなっちゃったんじゃ……」
彼はわたしたちに目を向けたりしない。声もかけない。一歩一歩、よろめくようにわたし達に……いや、わたし達を挟んで向こうにある縦穴へと向かっていく。
アスベルは見ていられないと両手を広げて叫んだ。
「リチャード止まれ! これ以上進んだらだめだ!」
「黙れ……ここまで来たのだ。ようやくここまで来たのだ。邪魔をするな!」
「くっ!」
なんの躊躇いも無く、リチャードはアスベルに剣を振るった。
反射的にアスベルもそれを受け止めるが、表情は辛いままだ。それでもリチャードは剣を振るうのを止めない。まるで相手が誰か、わかっていないように、剣を振るう。
アスベルは悲しそうに目を閉じ、そして覚悟したように剣を構えた。
みんなも、わたしも武器を構える。
「リチャード……」
「邪魔を、するな……我を守れ!」
そう、“彼”が強く叫んで。
次に響いた武器の金属音は。
わたしとソフィの間で、響いていた。