124.今は、泣いて

自分でどうにかしなきゃいけない不安を、またアスベルにぶつけてしまう。
どうしても抑えられない、頼ってしまう。ああ、嫌だ。こんなこと聞かせたらきっと嫌になっちゃうよ。わたしはちゃんと、自分一人で立てるから、だからみんなのことを好きでいさせてって思っているのに。みんなに好きになってもらえるように頑張っているのに。これじゃ、全部無駄になっちゃう。
でも止まらない。一度受け入れてくれたことを知っているからだろうか。また、話を聞いてとほしい。泣いてもいいって言ってほしい。わたしのことを受け入れてほしいと、言葉があふれてしまう。
それすらも悔しくって、でもやっぱり不安で。もう訳がわからなくなってぎゅううと自分の腕を握りしめると、暖かな衝撃がわたしを包んだ。

「お前は、お前だよ」

アスベルに抱き締められたのだと、耳元で聞こえた声で判断する。
あったかい。あつい。前がよく見えない。

「お前、グレルサイドで言ってくれただろ。アスベルはアスベルだ、リチャードとソフィの大事な友達のアスベルだって。それを、シオリに言うのはいけない事か?」

……そんなこと言ったかな。

「シオリはシオリだ。シェリアとパスカルの親友で、教官の娘みたいなもので、ソフィやヒューバートの姉妹みたいなもので……俺の大事な人だ。それだけは絶対だ」

そう抱き締める腕がやけに暖かく感じて。
そう断言する声がやけに頼もしく感じて。
わたしはゆっくりと、凍った雪が溶けていくように顔を緩めていって……ぽたりぽたりと、泣いた。
泣いた。
泣いた。
不安で泣いた。嬉しくて泣いた。
泣いて……それからすぐに、誤魔化すように笑った。
ありがとうと言って、もう大丈夫と手を繋いで港へと向かう。
今優先すべきなのは、わたしでなくソフィだから。
そう言って、でも代わりにと手を繋いだ。

「……アスベル」
「ん、どうした?」
「……ありがとう」
「……ああ」

繋いだ手が暖かいや、と笑う。
わかんない事はいっぱいだけど、こんな風に手をひいてもらえる間はちゃんと“わたし”でいられるような気がする。
そんな風に思わせてくれるアスベルはやっぱり凄くて、とても……好きだなあ、と、思った。