シャトルのある場所から出ると、ぽよよんぽよよんと少し間抜けな音が聞こえてきた。
見上げると、小さな丸い鳥のような物がふわふわと飛んできている。それはパスカルの持っていた……フェンデルの港でパスカルがポアソンちゃんから貰ったという通信機に吸い込まれるようにして止まった。
「ポアソンから連絡が来たよ。何々……う〜ん、繭から出て来た魔物は今も相当暴れ回ってるみたいだね。フェンデルでも危ないからって、民間の船の航行が禁止されたって」
「そうか……早くなんとかしないとな」
「……」
パスカル達の会話を無視して、近くに溜まっている水を見る。あの繭から魔物が現れていることは聞いていたけれど、今は、そのことに思考を割けない。何故だろう。綺麗な水面に反射する顔は不安そうで、なんだか苛々する。
……なんだろう、やっぱり胸騒ぎが止まらないのだ。胸の辺りが重くて、首筋やら肩やらがぞわぞわする。
あの頭痛の時に似ているような気もするが違う。それとはもっと違う、そう、なんというか、自分そっくりな奴に出会ったような安心感と嫌悪感と気持ち悪さ、とでも言うのだろうか?
痛いわけでも怖いわけでもない。ただ、ただ、体の内側が落ち着かない、のだ。
「シオリ?」
「え、あ、なに」
「いや……なんかさっきからソワソワしてるみたいだったから。どうかしたのか?」
「ううん、別に……なんか、胸騒ぎって言うの? がしてて……」
アスベルに声をかけられて、思わず素直にそう答える。
嘘じゃない。なんだかずっとざわざわするのだ。
言えばアスベルはわたしの前髪をかきあげて、半ば睨むようにわたしの顔を見る。
わたしの言葉の裏をしっかりと見定めようとする視線は少し怖かったが、それ以上に近い距離に戸惑った。
「それじゃ、シオリの胸騒ぎをとるためにあたしからも返事を出しますか。ちょいちょいちょちょいっと……そ〜れ、飛んでけ〜」
「あんまり関係ないわよね、それ……」
パスカルの明るい声に通信機の鳥が空へと飛んで行く。
空はこんなに青いのに、何が不安なんだか……と仰ぎ見ると、突然それが暗くなった。
それが魔物の群れだと気付いた時には声を失っていた。
コウモリのような翼と鋭い尻尾、魔物としか表現しようのないそれらが群れとなって空を飛んで行く。
「あれは、もしかして!?」
「繭から出て来た魔物か?」
「ラントの方角へ向かっています!」
「そんな……!」
「このまま見過ごすわけにはいかない。ここはひとまずラントへ向かうべきだろう」
どくりと、心臓が疼いた。
あの魔物からだ。あの魔物からざわざわとした何かを感じるのだ。
「みんな、ラントへ急ごう!」
僅かに震え出した体を誤魔化すように、わたしはそう叫んだ。