130.なつかしさに、眩む

ラントには、やはり何体もの魔物が群れをなして襲いかかってきていた。
バリーさん達が応戦しているが、相手は自由に空を飛び回る上に大してダメージを受けていない。

「みんな!」

飛び出して、それぞれに魔物に対峙する。
街の人達を逃がす為にも、ここは負けられない。

「……っ」

そう武器を構えた瞬間、ガクンと膝から力が抜けた。
思わず膝をつきそうになった瞬間に魔物に吹き飛ばされて、簡単に地面を転がった。

「シオリ!」
「っへいき! シェリアはソフィを!」

反射的にそう返して、わたしは二撃目をなんとか受け止める。
なんだか変な感じがした。見ていると、なんだか不安になるのに愛しさを感じる。
それは魔物の体に刃が触れる度に強く感じて、ただでさえ強いのに余計にやりづらくてたまらない。
ふと、相手が見たことない魔物なんかじゃない事を思い出した。そうだ、確かオーレンの森とかいう所で会った魔物にそっくりなんだ。見た目も、感じるこの奇妙な感覚も。あの時と同じ。同じだ。

「バリー! 後ろ!」

ハッと、アスベルの鋭い声に顔を向ける。
彼はバリーさん庇うように押しのけると同時に魔物に吹き飛ばされ、広場の階段に打ちつけられていた。

「アスベル……っどいてよ! 疾風星牙!」

痛そうなぶつかり方にサーッと血の気が引くのを感じる。
みんな自分の事で手一杯なのだから、早く援護に行かなくては!
そう思うが、みんなが苦戦する魔物をわたしが簡単に倒せるはずもなく、どんどんラントの北門の外へと押し出されていく。
ダメだダメだ、せめて、広場の中心辺りで待機しているシェリアとソフィの所までは戻らなくては。
盾にくらい、ならなくては。

「みんなを……守る」

ぴくり、ソフィの声が聞こえた。
今のソフィの声はか細いし、この距離では聞こえるはずもないのに、やけにはっきりと。
見れば、ふらふらとシェリアの指を解いて歩くソフィの姿がある。
無理をして……! と近付こうとして、またズキリと頭が痛んだ。いつもほどではないが、歩く気力をごっそり持って行くような痛みにわたしは門に寄りかかる。
魔物は攻撃してこない。ソフィの異変に気付いたようで、そちらを見ている。

「守る!」

大声でソフィが叫んだ途端、彼女を中心にして光が溢れ出した。
この光は見たことがある。
わたしがソフィに初めて会った時と、二回目のラントの時。
あの時にも見た光が街にいたみんなを守るように広がって、魔物を飲み込んだ。
そして……光が消えた頃にはもう、魔物の影なんてどこにもなかった。

「おお、やったぞ!」
「アスベル様達が魔物を撃退したぞ!」
「ソフィ! 大丈夫か!」
「しっかり、ソフィ!」

みんな慌ててソフィに近付いて、彼女の容態を伺う。
さっきまでよりもずっと荒い息に、みんな無意識に表情を青ざめる。
近付いてきたバリーさんも、ソフィを見て悲しそうに目を伏せた。

「アスベル様、お陰で助かりました。お嬢さん……こんな小さな体で我々を守ろうとして……」
「アスベル様、お嬢さんを早くお屋敷へ。後のことは俺に任せてください」
「わたし、バリーさんを手伝うよ」

ほとんど反射的にそう進言する。
シェリアが一瞬何かを言いかけたが、アスベルはそれをさり気なく制しながら力強く頷いた。

「わかった、頼んだぞ」
「うん、頼まれた」