怪我人の手当てを手伝う……といっても、道具をあちこちに持っていくだけの作業である。
前にやり方を教わってはいたが、まあ不慣れな奴を使うよりも慣れた人を使うのは当然だ。
リチャードの事で休戦状態になっているため、フェンデルとの国境紛争が無くなった為か、前よりたくさん用意されている道具達に少しだけ嬉しくなる。
不謹慎だが、リチャードのおかげで多くの命が救われたような気がする……まあ、大輝石が戻らないと結果的に全滅するわけだけれど。
そんなことを考えていると、バリーさんがやってきた。少し申し訳なさそうに頭を掻く。
「シオリさんもお屋敷に行っていただいて構いませんでしたのに」
「あー……今ちょっと、居辛いんです。言い訳に使ってごめんなさい」
「いえ、それなら……俺はアスベル様達にこれから面会するつもりです。シオリさんも一緒にいかがですか」
「あ、はい。……もう手伝えることもなさそうですし、行きます」
道具を医療班の人に渡してから、バリーさんと並んで歩き出す。
久しぶりに会うバリーさんはなんだか少し戸惑っているように見えた。なんとなくだけど。
「……アスベル様が、身を挺して俺を助けてくれました」
ポツリ、呟いてあの時か、と思い出す。
あれはやっぱりバリーさんを助けようとしていたのだ。ちょっと無理し過ぎじゃないかとも思ったけれど、アスベルらしいといえばらしい。
「あの人は……あの人なりに、ラントの事を思ってくれていたのでしょうか」
「……アスベルは難しい人じゃ、ないと思いますよ」
だから答えはきっと簡単ですよ、と言えば、そうですねと返ってくる。
まだ少し戸惑っているようだけど、きっとバリーさんとアスベルの間にある誤解とか思い込みとか……そういうのはきっと、もうすぐ無くなるような予感がした。