132.光は、消えず

バリーさんと一緒にラント邸に訪れれば、まだアスベルたちは来ていないようだった。どうやらフレデリックさんたちと、いろいろと話をしているらしい。まあ、ソフィも寝かさないといけないし、現状報告とかも必要だし、当然だろう。
執務室でバリーさんと一緒にアスベル達のお母さんであるケリーさんに挨拶をしていれば、やがてフレデリックさんに連れられてアスベルとヒューバートくんが入ってきた。
二人を見て、まず一番にバリーさんがお礼を言う。

「魔物は皆さんのおかげで無事退治できました。ありがとうございます。それとアスベル様……助けてくれてありがとうございます」
「よしてくれ。当たり前の事をしただけだ」
「ところでアスベル……その、ソフィはどう?」

恐る恐る伺うと、アスベルは悔しそうに顔を伏せた。
それだけでわかる。やっぱり、さっきの彼女は無理をしていたと。
それに、わたしだけでなくバリーさんもうなだれた。

「今休ませてるが容態はあまりよくない」
「そう……」
「俺達を守ろうとしてあんな事に……」
「そうじゃない。ソフィの調子が悪くなったのは今に始まった事じゃないんだ。バリーが気にする必要はない。シオリもだ」

すぐにそう言い切ったアスベルに、バリーさんもわたしも顔を上げた。
アスベルの目は、真っ直ぐだ。よく揺らぐくせに、彼の瞳はいつだって真っ直ぐで……だからか、バリーさんも少し躊躇うように問いかける。

「……これからはラントに残られるんですか?」
「俺にはやらなくてはならない事がある。親友を救う事。それと……ソフィの事だ」
「お嬢さんの……」
「ソフィを治す為に行かなくてはならない場所があるんだ。すまない……またしばらく留守にする。大変だろうがよろしく頼む」

そう申し訳なさそうに目を伏せたアスベルを、バリーさんはじっと見つめた。
そして一つ息を大きく吸うと……彼もまた、真っ直ぐに彼を見た。

「……アスベル様。俺は長い間、あなたを誤解していたような気がします」
「バリー……」
「それでは俺は失礼します」

どこか晴れ晴れとした顔で出て行ったバリーさんに少しだけ嬉しくなった。
そうか、バリーさんはちゃんと、自分で辿り着いたのか。
アスベルも嬉しそうにバリーさんの出て行った扉を見つめるから、わたしも嬉しくなって笑った。