145.廃墟の、世界

「ここが……フォドラ?」

見えた景色に、思わずそう呟いた。
目の前には荒野が広がっていて、緑もなければ人の影も無い。
今が夕方なのか、それともこれが普通なのかはわからないが空は赤らんでいて、それがより一層空虚感を出している。

「見渡す限り廃墟のようだ。ここが本当にソフィの故郷かもしれない場所なのか?」

ソフィを背負ったアスベルの言葉にわたしも頷く。
ここにはソフィに似合う花畑も何もない。ただただ荒れ地が広がっているだけ。命の気配を感じられない。こんな場所が、ソフィの故郷?

「この辺り一帯で大きな争いがあったようだな。それらしい痕跡がいくつも残っている。いつ頃の物かは不明だが」
「緑がないせいかしら。なんだか寒々しいわ」

シェリアが体をぶるりと震わせる。
それを振り払うように、いつもの調子でパスカルが空を指差した。

「遠くに見える丸くて青いのがあたし達の世界だね。あたし達の世界からこっちは見えないけど、逆は大丈夫なんだね」
「パスカル、ちょっといい?」
「ひとつ聞きたいのだが、このシャトルはもう一度飛ばせるのか?」

つい先ほど。勢い良く不時着したシャトルはこの荒廃した大地を大きく抉ることでなんとか急停止をした。つまりはそれだけの衝撃を浴びたシャトルは見た目にもわかるくらいくたびれてしまっているのだ。
外装はもちろん、中もたぶん、無事ではないだろう。少し不安になってマリクさんと聞けば、さすがのパスカルも苦笑を浮かべて自分の足でもう片方のそれを掻いた。

「う〜ん、ここまで豪快に壊れちゃうとさすがに厳しいな〜」

あはは、と引きつった笑みに一番最初に反応したのはヒューバートくんだ。

「それじゃぼく達は元の世界に戻れないかもしれないって事じゃないですか?」
「そんな! それじゃ、ソフィを治せたとしても帰れないわ」
「ソフィを治す過程で修理方法も一緒に探せばいいんじゃないかな」
「そうするしかなさそうですね……」

ふう、とため息をついたヒューバートくんにわたし達も頷く。
どちらにせよ調べるという手段は変わらないのだから大丈夫だろう……たぶん。

「よし、とにかくまずはソフィを治す事を最優先に考えよう。俺達はそのためにここに来たんだから」
「人がいれば話を聞けるのですが、近くに街は無いんでしょうか?」
「みんな、こっちに来てみろ。何か見える」

マリクさんの声にみんなでそちらに行けば、なるほど確かに、少し遠くに縦に細長い楕円形の大きな物体が見えた。
羅針盤に似たような何かを纏って静止している場所は明らかに地上ではなく浮いていて、人工物なのだろうなとは思う。
ただ……ただ、何かよくわからないけど、あそこには行きたくないと漠然と思った。

「……?」
「なんだあの物体は。まるで浮かんでいるようだ」
「う〜ん、あれがもしかしたらフォドラの街なのかもよ」
「あれが、街だって……?」
「だとしたら、あそこに行けば誰かに会えるかもしれないわね」
「よし、とにかくあの施設まで行ってみよう」