147.眠っていた、世界で

アスベルが言うその「生きた人」である小さな子供を追いかけていると、その子はまだ無事に見える建物の中へと入っていった。
崩れてしまわないかと心配だったけれど、中は案外傷んでいないようだ。外ほど荒れた様子はないし、中央にある光の螺旋のようなよくわからない装置も普通に生きている。
わたし達が追いかけていた子供は、その中心に置いてあるカプセルのような物をじっと見つめた。

「あの装置がどうかしたのかな」
「カプセルか何かっぽいけど……んん? 何か入ってる?」

ぼんやりと影みたいな物が見えて目を凝らすと、急に音を立ててカプセルが……というか、カプセルのようにして覆われていた光が消えた。
そして中から……一人の綺麗な、髪の長い女の人が姿を現す。
ずくり、胸が嫌な感じに疼いて、わたしは思わず後退りをした。

「……!」
「これは……中に人が!?」

皆一様に驚く中で、シェリアがその人の腕をとったり手を翳したりする。
どうやら生存確認をしているらしい。ある程度調べたところで、シェリアは不思議そうに腰を上げた。

「脈も呼吸もないわ……でも死んでいるようには見えない。どういうこと?」
「脈も呼吸もないって……」

みんな彼女に近付いて覗き込んでみるが、確かに死んでいるようには思えない。だが救護組織として働いていたシェリアが言うのだし……と首を傾げている時だった。
眠る女性がゆっくりと動き出したのだ。
うっすらと開かれた瞳にみんな驚いて一歩下がり、わたしは思わずアスベルの服を掴んだ。
彼女はゆったりと起き上がって歩き始め、わたし達が追いかけた子供に話しかける。

「サイ。あなたがあの人達をここに連れてきたのですか?」

サイと呼ばれた子供はコクリと頷く。

「生きていたのか……!」
「……あなた方はどこのどなたですか?」
「アスベル・ラントといいます。フォドラとは別の世界からやってきました」
「別の世界というとエフィネアから? 封印が解除されたのですか?」
「エフィネア……?」

聞き慣れない単語に、思わず首を傾げてしまう。
その様子を見て、彼女も不思議そうにサイを見た。
彼はふるふると首を横に動かす。

「そうではない? だとすると、あなた方はどうやってここへ?」
「あたしのご先祖様が途中まで作ってたシャトルを利用して飛んで来たんだよ。着陸する時に壊れちゃったけど……」
「ご先祖……というとあなたはもしや、アンマルチアの?」
「うん、そうだよ。アンマルチア族を知ってるってことは……もしかして、アンマルチア族ってこのフォドラと関係あるの?」
「その通りです」
「あなたはフォドラの方ですか?」

そう聞いて、彼女は申し遅れましたと軽く頭を下げ、優雅に服の裾を軽く持ち上げてみせた。
美人だからとても似合うのだが、何故かわたしの中に不安が募る。

「私の名はエメロードと申します。まさかエフィネアの方とこうしてお会い出来るとは思いませんでした」