「……ところで、シオリはいつまでアスベルの服を掴んでいるんだ?」
「え?」
テロスアステュを出た辺りでマリクさんにそう言われて、なんの事だろうと首を傾げる。
思わず立ち止まると、手をグイとひかれる感覚と一緒にソフィを背負ったアスベルも小さく声を零して立ち止まった。
それにゆっくりと視線を下げれば、アスベルの服をぎゅっと掴む自分の手が見える。
……え、何故。そうだ、確かエメロードさんを見てびっくりして掴んで……あれ、でもソフィ背負った後に離したんじゃ。あれ、つまりまた掴ん……
「……わっわわっ! ごめんアスベル! 皺になったね!」
「あ、いや……大丈夫だ。もう少し掴んでても良かったのに」
「いや、それは色々と申し訳ないし」
かあああっと熱くなった顔を誤魔化すように両手を振ってアスベルから離れる。
びっくりした。わたしは何をやっているんだ。
込み上げてくる気恥ずかしさとでもラッキー! という嬉しさに、ああわたしはやっぱりアスベルが好きなんだなぁと確認してしまう。
……いつかお別れするにしても、この好きだという気持ちは大切にしていいんだよね、シェリア……
前に話した事を思い出しながら深呼吸をする。
よし、これで大丈夫だ。
「……エメロードさんに会ってからなんとなく元気無いよな。どうかしたのか?」
「それはエメロードさんの美貌にクラッとしていただけで……いたっ」
勢いで言ってしまうと同時に凄まじい勢いで頭を叩かれる。
しかも左右から。
思わずしゃがみ込めば、叩いた本人であるシェリアとヒューバートくんはわざとらしくため息をついてきた。
「全く、シオリは相変わらずね」
「あなたが発言すると風紀が乱れます! もう少しシャンとしてください」
「二人ともおかたいなぁ……」
苦笑して立ち上がる。
これも二人の愛だと思おう。そう結論付けて再び歩き出すと、今度は優しく頭を触られた。
暖かくてやけに馴染むこれはアスベルの手だ。隣を歩きながら器用に撫でてくる彼に、また顔が赤らんでいくのを感じる。
「……もし、アスベルさん?」
「ん?」
「何故頭を撫でて来るんですか?」
「嫌だったか?」
「嫌、というか……」
恥ずかしいです、と言おうとしてやめる。
嫌と言えばいいんだろうがそれも言えなくて言葉につまる。
だからその、こういうの慣れてないんだけどなぁ……
なんて緩みそうな頬を必死にこらえていれば、後ろを歩いていたエメロードさんがぽつりと呟いた。
「……青春、ですね」