次のエリアに行こうとした時だった。
ソフィが小さく声を漏らしたかと思うと、急に彼女の全身が光り出したのだ。
今まで何度か見たような光に包まれた彼女に、エメロードさん小さく首を振る。
「ソフィの体が……!」
「粒子化が始まってしまいましたか……」
「粒子化……?」
「プロトス1は……肉体が粒子体で構成されているのが特徴です。今光っているのが、プロトス1の肉体を構成する粒子体です。ひとつひとつは砂よりも小さな物ですが、それが無数に集まり結合して人の形を取るのです」
聞き慣れない単語の意味を理解しようとしていると、ラント出身者みんなの体も同じように光り出した。
わたしとパスカルとマリクさんは光っていない。だからこそ余計に不思議でわたし達は思わず身構えた。
「アスベル、シェリア、ヒューバートも……」
「え、これってどういうことなの?」
だが一番驚いているのはエメロードさんのようだ。
信じられないという顔でソフィと三人を見比べる。
「プロトス1の粒子と同期しています……これはプロトス1が分減保全を行った結果のようです」
「分減保全……?」
「プロトス1はひどく損傷した場合、粒子化して自己の機能を停止させ肉体の再構成を行います。これを単粒子保全といいます。そして分減保全とは、粒子化した状態で粒子を別の器に分割する事です。プロトス1はあなた方の近くで粒子化した事はありませんでしたか?」
考える素振りを見せて、三人はすぐに思い当たったと顔を上げる。それに、わたしもひとつ思い当たった。
わたしは関係していないけれど、四人……リチャードも入れると五人、にいつもつきまとっていた出来事。
昔のソフィ。七年前。みんなを守って死んだという、ソフィの話。
「七年前のあの時か……?」
「しかし……分減保全は実行する事はないはずです。分減保全は単粒子保全に比べ、完全な再構成が非常に難しくなるからです。失敗すれば、復元が不可能になってしまう事もあるほどです。なのに、どうして……」
「その分減保全はもしかして、器自身にも問題があるんじゃない?」
「確かに、器の中で再構成の準備をする際に、器自体にも再構成を働きかけます」
「つまりソフィは自分の命を三つに分けて与える事で、アスベル達の命を助けたんだよ」
七年前、バロニアの地下通路で起こったという事件。
ソフィが死んで、シェリアの病気が良くなって、アスベルとヒューバートくんも怪我の重傷から戻ってこれた事件。
彼らが引きずる出来事。
その時に自分達を助けたのも守ったのもソフィで、その後もずっとソフィは一緒にいた。
パスカルのその仮説に、三人は泣きそうなくらい穏やかな顔で笑った。
「そうだったのか……七年前、ソフィは消えたのではなく俺達の中に入ったのか」
「私達、ずっとソフィと一緒にいたのね……」
「もしかしてぼく達がソフィと同じ力を持っているのも、それが影響しているんじゃ……?」
「ソフィ……」
ちょっと羨ましいな、と思った。
だってみんな繋がっているから。
「じゃあ、今の粒子の状態でもう一度分減保全するとどうなるの?」
「分減保全後は自己保全機能の再構成ができないため、自己保全自体ができなくなります」
「俺達の為に、そんな危険な事を……」
「この状況での粒子化は非常に危険なんじゃない? 早く行こう」