153.大好きな、思い出

突然現れた光によるパスカルとソフィは、互いに向き合う形で立ち、目を閉じたまま動かない。
だが見れば見るほどそっくりなそれに、わたし達はどうしても身構えてしまう。

「一体どういう事なんだ?」
「あたしにもわかんないよ!」
「逆流した粒子体の一部が実体化してしまったようですね」

その言葉の意味を理解しようと考えた辺りで、パスカルがたっとその粒子体の所まで走った。
そして、ゆっくりと自分そっくりのそれに手を伸ばす。

「パスカルさん!? なにを……」

ぱちっと、パスカルの形をした粒子体が目を開いた。
サッと離れた本物のパスカルには目もくれず、目の前の粒子体のソフィを嬉しそうに追いかける。
粒子体のソフィはそれからグルグルと走る事で逃げていたが、やがて疲れて息を乱し立ち止まった粒子体のパスカルに近付いて心配そうに肩を叩く。
……それは、いつも二人が行っている光景となんら変わりなかった。

「ソフィの精神の実体化……という事は、これはソフィの気持ちなの?」

シェリアが呟いたのを聞いて、少しだけ胸が熱くなった。
ソフィにとって、この光景が、きっとこんな状況でも夢見てしまうくらいとても大事な物なのだと言われたような気がして。
またソフィの唸る声がして、今度は複数の光が飛び出してくる。
それは順番に人の形を作り、それぞれがアスベル、ヒューバートくん、シェリア、マリクさん、そして……わたしになった。

「いっぱい出て来た……」
「害はないみたいだよ。みんなも来てみて」

パスカルに言われて、みんな恐る恐る自分そっくりのそれらに触れてみる。
ぼんやりとしているソフィを暖かく見守って、優しく手をひいてくれるシェリア。
転んでしまったソフィに、照れながらも手を貸してくれるヒューバートくん。
マリクさんの真似っこをしてみるソフィ。
それから、きっとあの幼い少年は昔のアスベルだ……に起こされて、ゆっくりと目を開くソフィ。

どれもいつもの光景。
なんてことないやり取り。
それを、こんなに大事にしてくれたんだな、と嬉しくなる。
粒子体のわたしに触れれば、ソフィと手を繋いで何かを話していて、時たまぎゅっとわたしがソフィを抱き締める。いつもは見えないソフィの表情がとても柔らかいから、わたしは思わず泣き出したい衝動にかられた。

「……こんな風に思ってくれていたのね……」
「またソフィが!」
「今度はなんだ?」

ソフィは再び、一際激しく声を上げる。
そして吐き出された光はわたし達から少し離れた場所に降り注ぎ形を変え、やがて見知った形へと変化する。

「リチャード!?」

そう、リチャードの姿に。