154.大切なはずの、思い出

粒子体のソフィとリチャードは互いを認識すると同時に床を蹴った。
ソフィの脚が彼に向かってのび、それを避けたリチャードの剣がソフィを捕らえようとする。
わたし達の時とはガラリと変わって始まった戦いに、どうしても困惑してしまう。

「どうしてリチャードには攻撃するの?」
「やっぱり、自分を酷い目に合わせた張本人だからかな?」
「でもあれは……」

まるで殺し合いだ、という言葉を飲み込んで、二人を黙って見つめる。
二人は一度大きく距離を取ると、それぞれの得物から光を放った。それは二人の間でぶつかり、膨らみ、強く強く光る。

「う……うぅ……ら……ラムダ……!」

ソフィの呟きが聞こえてハッと顔を上げると、そこにあった景色は変わっていた。
粒子体のリチャードは消え、そこには体が大きくひしゃげて顔の半分を仮面で覆う、影から生まれたような魔物が立っていた。
一番冷静に様子を見ていたエメロードさんでさえも、その姿に息を飲む。

「これは……ラムダ!?」
「消さ……ない……と……」
「皆さん危険です! 逃げてください!」

エメロードさんが始めてそう叫んだ。
反射的に下がろうとするが、魔物の大きな手がソフィに向かって伸びるのを見て、耐えきれないとアスベルが飛び出した。

「ソフィ!」

それを合図にしたように、みんなは床を蹴った。