「……?」
部屋から出て、研究室へ向かおうとした時だ。
くい、と控えめにスカートを引っ張られて後ろを向く。見た先には何も無くて、だが少し視界を下げればそこに“それ”はいた。
粒子体で出来ているらしく、淡く光る“それ”はじっとわたしを見つめている。かつて、写真で見た事がある、幼い頃の……わたしが。
「……」
くい、とわたしを引っ張る。
わたしは動かない。
粒子体の幼いわたしは悲しそうにわたしを見る。
なんでだろう、とても……怖く感じた。
「シオリ?」
呼ばれて振り返れば、わたしを待つアスベル達が見えた。
アスベルはわたしを掴む存在に気付いて少しだけ目を見張ると、ゆっくりとこちらに近付いてくる。
「……」
「あ……」
だが、近付いてきたアスベルに対して幼いわたしは辛そうに目を伏せると、たっとわたし達が向かうのとは反対側に走り去ってしまった。
たたた……と消える粒子体に、思わず首を傾げる。
「……なんだったんだ?」
「さぁ……」
「シオリにそっくりに見えたが」
「確かに幼い頃のわたしにそっくりだけど……ソフィは昔のわたしなんて、知らないもんねぇ」
何よりあの頃はちゃんと自分の世界にいたし、と心中で付け足す。
消えて行った先に何かあるんだろうか、なんて思ったが、追い掛けようという気はさっぱり起きない。むしろ、視界から消えた事にどこか安堵感を覚えた。
「追いかけるか?」
「ううん、いいよ。早くソフィを全快にさせよう」
軽く流すわたしにアスベルは何か言いたげな様子だったが、わたしは笑ってその場から離れた。