157.彼女の、使命

「プロトス1は……ラムダを消し去る為に作られた戦闘兵器です」

そう、エメロードさんは言った。
ソフィを装置に立たせてラムダに関する情報を見せた後、急に力尽きたように膝をついたソフィに彼女は淡々とそれを語る。
本当に、ただの道具の説明を、する。
それがなんだかとても嫌な気持ちになるから、思わず何か言おうとすれば、ソフィが何か追い詰められたように言葉を吐き出した。

「今度こそ……ラムダを消し去る! 今度こそ!」
『……ラムダ』

突然聞こえた朗らかな男性の声に、わたし達は辺りを見回した。
すると、ソフィがラムダの資料を見ていた装置が起動を始めているのが目に入って、そこに初老の優しそうな男性と小さな男の子を映し出しているのが、わかった。
どきり、何故か心臓が音を立てる。

『遊んでいたのか』
『……嬉しい時には……こうするんだ……』
「……っ!」

にこ、と、男性は歯を見せて笑顔を浮かべる。
それを真似するように男の子も形だけのぎこちない笑顔を浮かべた。
……その笑顔に、強く胸が締め付けられる。
わたしはこの笑顔を知っている。
わたしはこの光景を知っている。

『ははは……』
『器が魂を形成する事もあるのだよ』
『見たまえ……日に日に人間らしく成長しているではないか』
『私がなんのためにラムダを人間として育てる事にこだわったと思っているのかね』
『私は……!』

ぶつり、次々と映し出されていた映像が消えた。
静かになった部屋で、ポツリと最初に言葉を漏らしたのはシェリアだった。

「何、今の……」
「ラムダって言ってたような気がするけど……」
「あれはどう見ても人間だった」
「……コーネル」

その名を呟いたのはエメロードさん……ではなく、わたしだ。
するりと出て来た名前に、エメロードさんはその通りだと頷く。
どきり、また心臓が鳴った。
そうだ。彼はコーネルで、ラムダを育てた人間で、でもラムダは人間ではなくラムダは悪夢の代名詞とされていてラムダはラムダはラムダは……
ばくばくと耳元で心臓が鳴っているような気がして、ぎゅうぅと胸を押さえる。なんだろう。なんでわたしはそれを知っていて、どうしてこんなに苦しくなるのだろう。どうしてこんなに、どうして。

「……シオリ?」
「っ!」

ぐっと手を握られて我に返る。
見れば目の前に、心配そうにわたしを見るソフィと、手を握るアスベルがいた。
わたしはゆっくりと息を吐いて、それからにっこりと笑う……笑えたはず。
そして、ゆっくりと二人から距離を取って扉へ後ろ歩きで向かった。

「ごめんなさい、わたし、ちょっと外で待ってるね」
「シオリ……顔色が悪い。付いていこうか」
「いいよ。ありがとうアスベル。一人で平気だから」

でも、と渋るアスベルや他のみんなに両手を空の前で振って、わたしは部屋を出た。
怖かった。
なんだかとても怖くて、とても……一人になりたかった。