「……」
一人、出てきた扉の外には、またわたしがいた。
幼いわたしはじっとわたしを見てこちらに手を伸ばしてくる。それはわたしを呼んでいるようだったが……やはり、行くのは躊躇われてしまって、わたしはどちらも選べずにただ自分の足元を見る。
……この、幼いわたしの姿をした何かについていけば、何を思い出せるのだろう。何があるのだろう。ううん、わかってる。きっとこの先には全てがあるのだ。
でも、まだわたしは踏み出せない。アスベル達との、決定的な距離になってしまうような気が、したから。
「シオリ、待たせた。体は平気か?」
「別にもう大丈夫だよ」
アスベル達が出て来て、わたしはわたしを隠すように笑う。どうやら幼いわたしはすぐに走り出したようで、みんなは気付かなかったらしい。
それにこっそりと安心しながらみんなと合流して、とりあえずこれからバシス軍事基地へエフィネアに戻る為に必要なパーツを取りに行く事を聞いた。
心配そうに何度も具合を聞いてくるアスベルからなんとなく距離を取って、研究所の外に出る。そこでソフィの体を心配するラント出身者達を、パスカルは羨ましそうに見た。
「いいなぁ……これが同じ力を持つ者同士の絆ってやつなのか〜」
「まあ、それだけではないと思うがな」
「あたしも仲間に入りたいよ〜。ねえねえ、あたし達もソフィの力を使えるようになる方法ってないかな?」
「……難しいと思う」
「そんなぁ〜」
比較的早く返ってきた返事にガッカリと肩を落として、それから何か見つかるかもしれないと軍事基地に向かって歩き出す。
ソフィは確かにしっかりと歩いており、本当にあまり心配はないようだ。わたしはそれを確認してから、ゆっくりとエメロードさんに近付いた。
「あの、エメロードさん。お聞きしたい事があるのですが……」
「なんですか?」
「ラムダの事、なんですけど」
ほら、わたし頭悪くて理解遅れちゃって、と笑えばエメロードさんは「そうですか」と笑ってから話し出してくれる。
フォドラの悪夢の代名詞を。
「ラムダは自分の体組織から魔物を生み出す事が出来ます。そしてその魔物全てを操る事も出来るのです。それとあなた方の話すリチャードという人物。皆さんにお話した通り、彼はラムダによって寄生されている可能性があります。ラムダは人に巣くう悪魔なのです」
「……その体組織から生まれた魔物というのは……ラムダの精神に強く影響されるんですか?」
はっきりと頷くエメロードさんに、わたしは「ありがとうございます」とお礼を言って少し後ろに下がった。
フォドラに来てからはまだ感じていない、あの酷い頭痛。
リチャードがおかしくなった事。
それはみんな、みんなみんな。
ラムダが関わっているような漠然とした不安がわたしの胸にくすぶった。