21.ひとまず、終えて

ラントに着くと、あのバリーさんとか言う人が出迎えてくれた。
傍らでぐずっている男の子のことも気になるが、まずは気になっていた町のみんなの事を聞く。

「皆は無事に逃げられたか?」
「はい、おかげさまで全員無事に帰還できました。負傷者は何人か出ましたが……」
「お父さんが……僕のお父さんが……」

どうやらその負傷者の一人が、この男の子の父親らしい。
怪我の治療に参加することもできず、けれど落ち着いていられなくてバリーさんの後ろをついて歩いていたのだろう。
わたしはそっとしゃがみ込んで、男の子の頭を撫でる。
老若男女問わず、誰かに泣かれるのは好きではないのだ。
シェリアもほとんど同時に、男の子に視線を合わせて元気づける様にほほ笑んだ。

「泣くな少年。泣いたらお父さん、心まで痛くなっちゃうよ」
「そうよ。大丈夫、安心して。お父さんのことはお姉ちゃんが治してあげるから。負傷した人達はどこ?」
「広場にいる」
「私は怪我をした人達のところに行きます。シオリもその子と一緒に来てくれる?」
「うん、いいよ」

アスベルさんに対して相変わらずそっけない態度で言うシェリアに少しだけ苦笑しながら頷いて、わたしはほら、と男の子の背中を軽く叩く。
それからついで。可愛らしい花畑の少女の頭をひと撫でしてから、アスベルさんに行ってくる、と伝えてシェリアを追いかけた。

広場には負傷者だという人たちが集まっていた。広場全部を埋めてしまう、というわけではないが、数えるのは少し大変な人数だ。それぞれはそんなに深い傷ではないみたいだったが、それでも人の怪我というものに慣れないわたしは、無意識に顔を曇らせてしまう。
とりあえず、戦うよりはずっと手伝えることは多いだろう。シェリアに言われた通りに救護班の人から救急箱を貰って、彼女について動くことにした。

「ソフィは、七年前にあったある事故で亡くなったのよ」
「え?」

彼女がそう話し出したのは、広場の人たちの治療があらかた終わった時だ。
それまでなんとか怪我を悪化させないように、物資を無駄にしないようにと気を張っていたので、突然そう切り出されて素っ頓狂な声を上げてしまう。
シェリアはそのことは特に指摘せず、ただ堅い表情のまま領主邸へと向かいながら話を始めた。

「ソフィの話。さっき、一人だけ意味がわからないって顔、してたじゃない」
「そうだけど……いいの? 聞いて」

ソフィさんの話は、明らかに二人にとって重大で大事な話であると、部外者のわたしでもよくわかる。気にならないわけもないが、だからといって、無理に聞き出していい話でもないと、ちゃんと理解していた。
だから言いたくないなら聞かないよ、と言うが、シェリアは悲しそうに笑って、ゆるやかに首を振った。
話したいの。誰かに聞いてほしいのよ。と、そう言って。

「いいのよ。知っていてほしいの。私もヒューバート……アスベルの弟もアスベルも、きっとそこから今に繋がってるから」

そうして話し出したことは、七年前の、記憶。