161.わたしの、なかの

エメロードさんの言葉がよくわからなかった。

「正確にはラムダの体組織が……ラムダの体組織から魔物が生み出せる事は話しましたね? その延長で、人間に体組織を移植したら、という研究も行われていたのです」

彼女は何を言っているのだろう。
彼女は何を知っているのだろう。

「その結果ほとんど成功はしませんでしたが、瀕死の魔物に移植した際、驚異的な回復力を見せた物がいました。どれも後に死んでしまいましたが。ですから……」

……しにたくない

「わたし!」

思わず叫んでからハッとする。
みんなの視線が集まっていて、背中に当たるアスベルとの間に汗が滲んでいるのに気付いた。
聞きたくない。
聞きたい。
ラントや色々な場所で感じた頭痛。
リチャードの中にいるかもしれないというラムダ。
リチャードを見て感じた色々な、色々な……

「わたし、外で待ってるね」

気付いたらそう言っていた。
いつもみたいに笑顔をはりつけて、一人出口に向かう。
そしてまた、わたしは当たり前のように“それ”を言う。

「なんかよくわかんないけど、とりあえずわたしは中に入らない方がいいって事みたいだから」
「シオリ」
「大丈夫だよ。いってらっしゃいみんな」

いつもと違うのは、今度はみんなの返事を待たなかったという事だけだ。
わたしは逃げ出すようにすぐに外に出る。距離は、そんなに長くない。けれどいつも戦うよりも息を切らして、緊張もして。どくどく、ぜえぜえ、心臓もぎこちなく動くのを感じながら、ぐっと目を閉じた。
それから、入り口に立っていたヒューマノイド……これは物資供給をしてくれるらしい……に話し掛ける。

「ねぇ君、みんなに伝言を頼める?」
「伝言……承ります……どうぞ……」

彼がそう言ったのを確認して、わたしは決意に満ちた声で言った。

「コーネル研究所に行ってきます。そのままテロスアステュに戻りますので心配はしないでください」