泣いて、しまいそうだった。
自分を優しく受け止める水の感覚が、ゆっくりゆっくり消えていく。
自分に触れていた部分はどんどん生ぬるくなって、僅かに体を動かせば波紋が広がってほんの少しだけ冷たさを取り戻す。
そうだ、あの時もそうだった。
わたしはこうして水の中にいた。
土砂降りの雨の中で、こうしていた。
今はやっぱり夢なのかな。
わたしが見てる楽しい楽しい夢なのかな。
馬鹿みたいだ馬鹿みたい、どうせわたしは仲間になんて入れないのに。
どうせわたしは、わたしは。
「シオリ!」
ぱちり、目を開けた。
そうしたら目の前には何故か軍事基地にいるはずのみんながいて、寝そべっていたわたしを起きあがらせる。
はて、何故ここに、ああそうか、伝言残したから。
「何やってるんですかこんな所で! ああもうびっしょりじゃないですか!」
「ほらじっとして、今拭くから」
ヒューバートくんが怒るのを聞きながら、シェリアに持っていたらしいタオルでゴシゴシと頭やらなんやらを勢い良く拭かれる。
それでもどこか丁寧な拭き方に、ああ、本当にシェリアだと、目が潤むのを感じた。
ナデナデ、誰かに頭を撫でられる。
見ればそれはソフィだった。
「シオリ、どこか痛いの?」
「え? 怪我したの? 大丈夫?」
「……ソフィ」
ぽつり、そこでわたしは初めて声を出した。
何故だかそれ以上言えなかった。
痛くないよとも大丈夫だよとも。
「うん、ソフィだよ」
「シェリア」
「ええ」
「パスカル。ヒューバートくん。マリクさん。エメロードさん……アスベル」
みんなの名前を順番に言っていたら、みんなはギョッという顔をした。
なんでだろうと思って、自分がだばだばと涙を零している事に気付く。おお、随分出る。
鼻水も出て来たとか呑気に思っていれば、みんなが慌てて手を振りながら無理矢理に笑顔を作る。
「えっちょっシオリ!?」
「どどどどうしたんだ? どこかやっぱり痛むのか?」
「辛いならおぶるぞ?」
「ほ〜ら、笑って笑って〜」
ごめんなさい嘘です。
みんなが嫌いだなんて嘘です。
本当は大好きです。
怖いから嘘をつきました。ごめんなさい。
心の中で何度も謝って、わたしは目の前にいた人に抱き付いた。
それがアスベルと気付いて離れようかとも思ったけど、まあいいや今だけと少しだけ力を入れる。
やがて頭を撫でてくれるあの大好きな感触を感じて、わたしは少しだけ声を漏らして泣いた。
いつだったか考えた家族設定。
お母さんなシェリアがいて、パスカルとソフィとヒューバートくんが仲良し兄妹、お爺ちゃんにマリクさんがいて、アスベルがお父さん。
あの時、わたしはどうせいなくなるからって考えなかったけど、わたしも仲間に入っていいのかな。
そんな夢みたいな事、続けていいのかな。
「ずびっあ、の、あのね、あの、」
「ああ」
「みんな、みんなにちゃんと、っ、話したい事が、あるんだけど、」
「ああ。ゆっくりでいいよ」
「っう、うぇぇ、うっうぅぅうぅ、」
思い出したんだよ。
わたしがここに来た理由も、わたしがわたしである理由も。
だからどうか聞いてください。
わたしの、雨宮潮流のお話を。