172.プロトス1と、災いの種

繭の一番、奥の奥。
中心部であろうそこに、彼はいた。

「リチャード……」

リチャードの体を黒い靄が覆っているのが見える。
それだけじゃない。彼の背中には、魔物と同じような黒くて大きな翼が生えている。ラムダと一体になろうとしているというのは本当だったのだろう。綺麗だった金髪は銀にくすんで、上半身は大きく露出しながら黒い物で足を包み、黒い黒い……角だか爪だかを持って目を赤く充血させた姿は、とてもリチャードとは思えない。
やっぱり、リチャードは……

「リチャード! その姿は……」
「貴様達……何故ここに……」
「お前、リチャードなのか? それとも……」
「今喋っているのはラムダの意識。騙されては駄目です!」

エメロードさんの鋭い声に、リチャード……ラムダはにいと口角を上げた。
ぞくりとするような笑顔。
だが不思議と、それから目を外す事が出来ない。

「ここまで来れた事は誉めてやろう。だが……残念だがここまでだ……貴様達に我を阻む事は出来ない!」

バサッと広げられた翼。
彼の頭上に集まる黒い塊に、風が集まるのがわかる。
それを放とうとするリチャードに、だがアスベルは自分から駆け寄った。

「リチャード、俺の話を聞いてくれ!」
「アスベル、危ない!」
「リチャード、頼む、話を!」

キィインと音を立ててそれは弾かれる。
リチャードは答えない。ラムダが再び翼を広げる。
戦いが、始まる。
……一番の親友の声さえ届かない。リチャードは、自分から手を離そうとしている。
ふと、彼と目が合う。彼はわたしを残念そうに見ると、小さく何かを呟いて、そのままついと視線をそらした。
そらして……向かって来たアスベルに対して自分の得物を構えた。
決意したアスベルに続いて、わたし達も戦闘体制に入る。
わたしはグッと、剣を握った。

「……ラムダ。わたしは……」