わたしが寝こけていた間のあらすじ。
とりあえずエメロードさんは無事に倒すことができた。だが、ラムダと拒絶反応を起こしてしまったようで、そのまま爆発して死んでしまったらしい。
それだけでもすでにみんな混乱していたのに、更にリチャードが再び“自分から”ラムダを迎え、星の核へと向かったとのことで、さらに混乱した。彼は、彼自身の意志で、ラムダを迎え入れたのだ。
その理由もわからず動揺し、わたし以外のみんなも怪我が多くて動けず……結局、星の核へと向かう彼をこのまま追いかけるのは危険だということで、一度撤退してきた、らしい。
シャトルの中で見た言い争いは、己の使命をまっとうしようとするソフィと。彼女を犠牲にさせたくないアスベルの意見のぶつかり合いだった。
ソフィはラムダを自分ごと消滅させる。それが使命であり、やるべきことであり、そして今、実際に自分たちができるラムダへの唯一の対抗策なのだと言った。これ以外にラムダを消す方法はない。アスベルに出来る事は何も無いと言い張り、そしてアスベルはそれを真っ向から否定して口論になった……というイベントがあったのである。
そして今、ラントに着いて、ソフィとシェリアは二人だけで話をしたいとパーティを離れ、アスベルがそれを迎えに行ったところだ。
なんというか、わたしは重要なイベントに全く参加出来ていないような気がして、思わずため息が出る。
「また、役立たず……」
役に立つチャンスもなかった。いや、あそこでわたしがラムダの側に立って攻撃するよりはましだっただろう。エメロードさんの言葉からして、おそらく、わたしの体というのは、完全にラムダが操ることができるらしい。彼女の言う通り、感謝による情け、だったのだろう。
でも、何も役に立たなかったのは事実だ。しかも武器も壊れてしまったし、みんなの気持ちを宥めてあげられるわけでも救えるわけでも何でもない。何もできない。わたしはもうこのまま大人しく街娘でもやるべきなんだろうか。
ついと庭の方を見て、多分そこにいるだろう三人を思う。
シェリアはわたしとアスベルが同じくらい好きだから、なんて言っていたけど、やっぱり彼女の方がお似合いだ。
可愛いししっかりしてるし、わたしよりずーっとアスベルを想っていて、何よりこの世界で生きる、れっきとした女の子。
普通に勝ち目無いよなぁ……と抜けるように息を吐けば、マリクさんが隣に歩いてきた。
「なんだ。シオリはアスベルとシェリアが気になるのか?」
「だってシェリア可愛いし……って、なんですかニヤニヤして」
「いや、立派にヤキモチ妬くようになったのかとな。な、パスカル」
「シオリもやっぱり女の子だな〜って。ね、教官」
ニヤニヤと笑う教官とパスカルに首を傾げる。
はて、何を……と考えて、ハッと二人の言いたい事を理解する。
カアアッと顔が熱くなって、わたしは慌てて両手を振った。
「ちょっまっはぁっ!?」
「シオリ姉さんの気持ちに気付いてないのなんて兄さんくらいですよ」
ヒューバートくんがトドメとばかりに冷静にそう言ってくる。
何故だ。何故そんな話題になる。
今はシリアスのお時間だろう。というかなんでそんなにバレバレなんだ。いや、確かに何人かは気付かれてそうだったけれど、パスカルまで!
「わ、わたしって、そんなにわかりやすいっすかね……?」
「ふ。恋した者は皆、無意識に相手を見ているものさ」
「恋がわかんないって言ってたあの頃が懐かし〜。シオリも、すっかり大人になって……」
「そのよくわかんないノリ止めようよ!」
「告白はいつするの?」
「しません! ていうか何この空気もっと緊張感とかさぁ!」
「異世界だなんだで遠慮してるなら大間違いだぞ。他人なんて皆異世界人のように感じるものだし、お前は今間違いなく生きているのだから」
「だから……っ」
「早く姪だか甥だかの顔が見たいものです」
「〜っ」
意地悪だ。
みんなそろって意地悪だ。
多分、沈んだ空気をなんとかしようって事なのかもしれないけど、意地悪だ!
「ごめんなさい待たせて。ソフィとアスベルはもう少し……
「みっみんななんか大好きだけど大嫌いだぁ! わたしは拗ねてやる! みんなの事呼び捨てでなんか呼ぶもんかぁー!」
「え、シオリっ?」
丁度部屋に入ってきたシェリアの横を通り過ぎて、部屋の隅にうずくまる。
アスベルがソフィと共に帰ってくるまで、あと数分。