「あれ、ソフィにパスカル?」
さあみんなを見つけ出すぞ、と意気込んで外に出ると、さっそく目的の人たちを見つけてしまった。
ラント邸から出てすぐにある花壇の場所。そこに並んで座り込んでいるソフィとパスカルは、はて、一体何をしているのだろうか。
「二人とも寝れないの?」
「あたしは帰る途中だよ〜。本当は色々弄ってたんだけどね。もう寝なさいってお姉ちゃんに」
怒られちゃった、と笑うパスカルに、あれ、と思う。それから、あの必要以上にフーリエさんに気を遣う風ではなく、一番最初に彼女を自慢した時と同じ笑顔なんだと気付いて、わたしも頬が緩んだ。
だって、ちゃんとお話が出来たってことだ。シャトルでフォドラに行くとき、助けてくれたお姉さん。そんなお姉さんが、やっぱりとても大好きな妹。そんな二人がまた仲直りできたのなら、それはとても嬉しいことだ。
「……フーリエさんに怪我はなかった?」
「うん! やっぱりお姉ちゃんはあたしの自慢のお姉ちゃんだったよ!」
「そっか! で、二人はなんでここに?」
「クロソフィの花を見てたの」
嬉しそうに答えたパスカルに笑って、ソフィの方を向けば彼女も柔らかく返してくれる。
彼女も先程までよりずっと落ち着いているようだ。よかった。みんな、この決戦の前日を、穏やかな気持ちで迎えられているようで、何故だかわたしが安心した。
「クロソフィ……ソフィの名前の元になった花だっけ」
「うん。光を一杯あびると風花になるんだって」
「へぇ……」
「いつかアスベルと一緒に見るの。その時は、シオリも一緒に見よう」
約束、と小指を出してきた彼女からの、“未来への”約束。
それはちゃんと、ソフィの中で“絶対に帰ってきたい”という意思があるという意味だ。
ちゃんと、一緒に。この先の未来へ行こうという、約束。
「……うん。約束」
わたしは思わずはにかみながら、その指に自分のそれを絡めた。
うん、もう大丈夫。
ちゃんとみんな帰って来れる……そう笑う。
そうしていると、パスカルが何か言いたそうに自分を見ている事に気付いた。
「あのさ、シオリ……シオリはさ、ラムダの……」
そこで区切られた言葉に、なんとなく言いたい事を理解する。
わたしはラムダの体組織によって生かされている体だ。だから大元であるラムダがいなくなったらわたしはどうなってしまうのだ、という確認だろう。
でも不思議とそれに対する不安はわたしの中に無かった。だってもう、これはわたしの物だから。
「大丈夫だよ、パスカル。これはもう、わたしのだもん。実際、エメロードさんもわたしを処分しなかったでしょ。あれはたぶん、ある程度操ることはできるけど殺したりはできないってことだと思うよ」
「……そっか。じゃ、約束! シオリ、全部終わったら一緒に遊ぼう! トランプとかパズルとか一緒にさ。シオリの世界の遊びだって知りたいし。ね! あたしとも約束しよ!」
「え、うん。わたしあんま強くなくていいんだったらいいよ」
力強く笑えばそう小指を突き出されて、わたしは苦笑しながらそれに指を絡めた。
ゆびきりげんまん、と手を振って、パスカルは満足そうに笑って、よし! と声を出す。
「じゃあ、わたし寝るね」
「あたしも寝るよ。ソフィ、一緒のお布団で寝る?」
「パスカルいびきうるさいから駄目」
「む〜ん、さすがにいびきはなぁ……まぁいいや。部屋は同じだしね。じゃあお休みシオリ」
「お休みなさい」
「うん、お休み」
可愛いなぁなんて思いながら、ラント邸に入って行く二人を見送る。
そうして背中が見えなくなってから、そういや二人に「わたしを和ませて励ましてくれてありがとう」と言えなかった事に気付き、慌てて二人を追いかけた。