186.笑う、君の

ハッと意識が戻ってくる感覚と同時に、その夢のような映像は消えた。
なんだったのだろう、今のは。
頭の中に直接送られて、夢でも見るかのように身近に感じた今の映像。
またわたしの中のラムダの欠片が、なんて胸に手を当てるけれど、どうやら今の景色を見たのはみんなも同じみたいだ。
どこかぼんやりした表情で、アスベル達がゆっくりと辺りを見渡す。

「みんな……今何か見えなかったか?」
「見えたわ。あの場所……フォドラにあった施設よね」
「ぼく達がフォドラで見た映像と同じでした」
「ラムダだけじゃない。エメロードや、施設の記録で見た人物もいた」
「一体なんだったんだ? 皆で同じ光景を目にするなんて」

みんなして一様に首を傾げる中、ソフィはいろいろと考えるように黙り込んで……やっぱり、彼女も心許ない様子で首を傾げた。

「ラムダとこの世界の同一化が進んでいる事が関係あるのかもしれない」
「体に影響を受けたりとかはないみたいだけどね。シオリ、何かおかしかったりしない?」
「……うん、大丈夫みたい。みんなは?」
「特に変わりはないわ。あの映像を見た時から気になっていたんだけど……ラムダは……あんな風に笑ったりもできるのね」

シェリアの言葉に、一瞬だけみんなが困惑したような表情をした。

「なぜあのような現象が起きたのか不明だが、ラムダの仕掛けた罠という可能性も捨てきれん。この先も何があるかわからない。警戒しながら先に進もう」

それでも発せられたマリクさんの言葉にみんなも頷くが、アスベルは一人静かに……多分独り言を呟く。

「笑ったりもできる、か……」
「……」

笑う。そうだね。
ラムダだって、笑うんだよ。
きっと可愛らしい笑顔で、笑うんだ。
何故だか無性に、そう叫びたくなった。