191.雨の、中で

「ラムダの気配が凄く近い……もうすぐで最下層だよ」
「いよいよ、か……」

先程までとは打って変わって、どこか終末を思わせるような縦穴……ガルディアシャフトの最下層。
宙に浮いているような小島のような地面があちこちに浮かんで、とこどころがボロボロに砕けて宙に浮いている。
まさしく最終ダンジョン、といった雰囲気だ。
わたしは気を引き締めて、みんなに続いて歩き出す。

「……うひっ!?」
「シオリ?」
「い、いや、なんか急に冷たいのが……て、なにこれ、水?」

急に首筋に冷たい物を感じて思わず声を上げると、みんなの視線が集まってくる。
やだ、なんか恥ずかしい……と首を押さえていると、またポツポツと水が落ちてきた。
それはこの辺り周辺で落ちているらしく、だんだんとあちこちに水溜まりを作り出している。

「どこから降って来てるのかしら……」

もちろん、頭上に天井なんてない。
どこまでも高く感じる空間があるだけだ。
そこから落ちてきたようだが……はて、雨だろうか。
みんなで辺りを確認していると、パシャンと水溜まりに飛び込むような音がした。
一斉にそちらを見る。

「……ぁっ」

そこにいたのは、あの幼いわたしだった。
研究所にいたはずの彼女が、水溜まりの上に立っている。

「あれは、シオリ……?」
「でも、小さい」

実は初めてみんなと対面したらしい彼女は無表情にこちらを見て、そして静かに水溜まりに手を触れた。
彼女が触れた水溜まりの水はぐにゃりと歪むように宙へと浮かぶ。
大きな水球として形を作り始めた水は、なにか機械のような人形のような、不思議で奇妙な形の魔物になっていく。
そして……最後に。
彼女は彼女に落ちてきた水を両手で受け取って、一つの球を……コアのようなものを作った。それを魔物に空いていた空洞にはめ込む。

「え、ちょ、なに?」

コアをはめられたそれはやがて光を放って動き出し、そしてその腕をわたし達に向けて大きく振るった。
散らばる事でなんとか避けるも、魔物は再び構えてくる。
……戦闘開始だ。
ようやくそう判断が追いついて、マリクさんがみんなに聞こえるように叫んだ。

「とにかく構えろ!」