「なんだったんだ、今のは」
彼女が消えてしまった後、少しの間をおいてから、マリクさんがそう呟いた。
「シオリ姉さんの小さい頃……でいいんですか?」
「うん、多分……あそこまですれてなかったと思うんだけどなぁ……」
正直よくわからないよ、と答える。研究所とかでも会ったけど、実際わたし彼女について何も知らないし。
そうあっけからんと答えれば、シェリアがどこか勢いを持ってわたしに近付いてきた。
どうしたの、と聞こうとして、ガッシリと両肩を掴まれる。
「シオリ、私もずっと、何があったって好きだからね!」
「え、」
いきなりどうした。わたしの方こそこの溢れる君への愛をどうしようかと日々悩んでいるよ。
とか返そうとすると、何故かシェリアに対抗するようにソフィとパスカルも詰め寄ってきた。
「わたしがシオリの未来を守る」
「あたしなんか愛しちゃってるよ!」
「ぼ、ぼくも……シオリ姉さんの事を嫌ってなどいませんよ」
「嫌うはずがないだろう」
「う、うん……ありがとう」
なんか、さり気なくヒューバートくんやマリクさんも言い出したけど……これは、励ましてくれているのだろうか。
それだけでもう十分だよ、なんて思ってしまう。
本当に、満足だ。
「しかし……アスベル。あれはシオリへの告白か何かか?」
「こっ!?」
「え、あ、いやその……」
マリクさんの言葉に反射的にアスベルと目が合ってしまい、かぁ〜と顔が赤くなるのを感じる。
や、やばい、なんかもう心臓がとかじゃなくて体中がバクバクいってる気がする!
真意はさておいてこの話題を引き延ばされるのは心のHPが無くなるような気がしてならないので、わたしは慌てて話題を終わらせようとする。
「い、今は先を急ごうそうしよう。ね! ね!」
「ふっ……まあいいか」
ちくしょう、その「まだまだ青いな」と言いたげな笑みがなんか腹立つ……!
とりあえず終わった会話にホッとしながら再びみんなで歩き出す。
ふと前にある背中達を見て、なんだか急に気持ちが落ち着くのを感じた。
小さな背中、大きな背中、華奢な背中……今まで何度も見たこの背中に、わたしは守られてきたんだなと。
初めて会った時から今までずっと。
誰かだけじゃなく自分ごと、彼らは守ってきたんだ。
カーツさんだってフーリエさんだって、誰だってみんな、自分とは関係ないはずの人達みんなの笑顔を守ってる。
今こうしているだけで、わたし達はみんなを守ってる。
苦しんで足掻いてただ生きることも、大切な人たちとその未来を守る事に繋がるのだとしたら、わたしは。
「シオリ?」
わたしも、みんなの事を守れた?
「……わたし、みんなが大好きだよ。だからもう少し、頑張ろっか」
誰かを笑顔にするのは凄いことだから。
だからわたし、頑張るよ。
さよなら、わたし。