「あれが、ラムダなのか……」
誰かがそう呟いた。
目の前の光が形作った姿は、あの施設での姿とは大きく異なった異形であり、白から紫へとグラデーションがかったそれはまるで何かの像のようで。
ぞくりと体が粟立って、目の奥がチカチカと瞬いたような気がした。
「リチャードの体から離れて、今まで取り込んだ原素と融合してる!」
「あれを倒したら、全てが終わる……!」
『全てが、終わる……?』
ラムダの声が紡がれる頃には頭がぼんやりとしてきており、視界が一気に狭まったような感覚がする。
ぐらぐら、ぐらぐら。
聞こえてくる声が麻酔みたいに広がって力が抜けて行く。それでも倒れはしない足は自然とラムダに向かって近付いていく。
『我を倒したら、次は何と争う? 争う相手が見つからなければ、自ら作り出すか? 人間はいつもそうだ。存在していくために他を犠牲にし続ける。その必要がないものまで争いに巻き込み悪として滅ぼす。』
「それがいかに無知で誤った考えか、わかろうともしない」
自分の声すら遠く感じる。
わたしは今、何をしていたんだっけ?
そうだ、わたしは約束を守らなきゃいけないんだ。
泣いているあの子の傍に、行かないと。
「放っておいてくれれば良かったのに。人間はいつだって誰かを責めずにはいられない」
「シオリ……?」
「約束を果たそう、ラムダ」
ラムダの真下に来たわたしの前に、暗い闇で出来た剣が落ちてくる。
地面に突き刺さったそれを掴んで、わたしは自然と笑顔を浮かべた。
遠い。
みんなが遠い。
だからわたしが、行かないと。
「わたしがずっと、一緒にいてあげる……」
剣を引き抜くと同時に溢れ出した闇に、無性に頭が冷静になっていく。
ラムダの邪魔をするみんなが敵。
わたしを放っておいてくれないみんなが嫌い大嫌い。
それだけ。それだけなんだ。
殺されるその時まで、あなたが生きるための道を照らす為に剣を抜こう。
『死を持ってその罪を償うがいい!』
約束だよ、ラムダ。