「倒したのか……!?」
肩で息をしながら言う彼らに、わたしは一度目線をやる。けれどすぐにラムダへと視線を移し、再び光だけの姿になってしまったラムダを見。
光からは原素が溢れ出し、だがそれはもうラムダではなく星の核へと流れてしまっている。それを見て、あの子は嬉しそうに歓声をあげた。
「見て、星の核に原素が吸収されていくわ」
「これで星の核は元に戻る。大輝石にも、再び原素が行き渡るようになる」
「……世界は元通りになるんだな」
安堵に満ちた彼らの言葉はもうどうでも良かった。
守れなかった。ああ、わたしは守れなかったのだ。
ラムダとした約束を。ラムダ自身を。
守れなかったラムダの光が弱まっていくのを見て、胸が痛くてたまらない。
「ラムダの光が弱まってる……何にも寄生しない状態でいればこのまま消える……のかな?」
彼女の言葉に、少女が真っ直ぐとラムダを見つめ……そして、静かに答えを口にした。
「……駄目。消えない」
背後から驚きを隠せなかった声がする。
そう、ラムダは消えない。
眠ってしまうだけ。
ひとりに、なってしまうだけ。
「この状態になっても、ラムダは長い眠りを経た後、再び力を取り戻す」
「そんな……」
「せっかくここまで来たのに……どうにかならないの?」
自然とわたしの足は歩いて、彼らの前に立ちふさがった。
両手を広げてラムダを守るようにして立てば、みんなはどこかつらそうにわたしを見る。
「シオリ……」
その中で少女はわたしを呼ぶと、そのままわたしの横を通り過ぎた。
止めなくちゃ、と思うのに、それ以上に胸が痛くて痛くて動けない。
「ソフィ……お前まさか……その光ごと一緒に消える気じゃ……」
「……みんな。今までありがとう。みんなといられて、わたしはとても幸せだった」
みんなが大好きだよ
そう言ったのは、思ったのは、紛れもなく事実だったはずなのに。
「わたしはみんなと、みんなの未来を守りたい。みんなの住むこの星を守りたい。だから……」
「待てよ! お前は俺と約束したことを忘れたのか!?」
いつかアスベルと一緒に見るの。その時は、シオリも一緒に見よう。
そう言ったのは、約束したのは、ほんの少し前の事なのに。
「今のわたしが消えても、みんなの中にずっとわたしのかけらが残ってる」
「それじゃあ消えちゃうのと同じじゃない!」
「……前にわたしを分けて、みんなの命を繋いだ時と同じ。今度はもう……みんなに会う事は出来ないけど……それでも、ずっと一緒にいられるから」
みんなが遠い。遠い。遠い。
……わたしが動かないから、遠いんだ。
「……ソフィ?」
ぽつり、そう呟いた。
何故だろう。ずっとその名前を忘れていたような気がする。
目の前にソフィだけがいないのを見て、わたしは慌てて振り返った。
そこにいるのはラムダと、そして少しだけ驚いたようにわたしを見る、ソフィ。
あれ、どうしてこうなったんだっけ?
あれ、わたし、わたしは……
「え、あ、わたし……な、なにを……」
「良かった。シオリ」
ソフィの甘い声がする。
あの可愛らしい声が、笑顔が、わたしに向けられる。
「ちゃんとさよならって、言える」
そうだ。
ラムダとソフィが対消滅をしようとしているんだ。
ようやくハッキリしてきた頭に、ラムダに向かって手を伸ばすソフィの姿がくっきりと入ってくる。
駄目だソフィ。
そうするならいっそ、わたしが……!
「だめ、ソフィ……!」
「止めろ、ソフィ!」
だがわたしが走るより先にアスベルが走った。
ソフィとラムダの間に割り込むようにして入り、強くソフィを見る。
「言っただろう。俺は絶対、お前を消させないと!」
そう言うやいなや、彼は勢い良く自分の手でラムダを掴むように触れた。
ラムダの光が彼を侵食するようにまとわりつくのを見て、みんながアスベルの名を呼ぶ。
「来るな! ぐ……」
「アスベルの体が……」
「アスベルが……アスベルがっ! ……いやあああああ!!」
シェリアの悲鳴が耳をうつ。
わたしは動けない。
これは、再びラムダの意のままになったわたしの弱さの責任なのだろうか?
わたしが、わたしがラムダと一緒に居る筈だったのに、なんで。
「兄さん……っ」
「大丈夫だ……俺は乗っ取られたりしない。ただ……生きたいだけなのか……それを……確かめる!」
そう微かに笑った彼は、まるでラムダを抱き締めるようにして強い光を放ち。
そうしてゆっくりと……そこに、倒れた。
「アスベルーっ!」