再び遺跡の外に出て、大きく伸びをする。
日の光が心地良い。遺跡の中も楽しいけれど、やっぱりお日様の下が一番だ。
本当に目的地の近くに出ることができたのかを確認していたリチャードさんも、その目的を達したことを理解して、安心したように息をついた。
「どうやら無事に対岸へ渡れたようだ」
「これで予定通りグレルサイドへ向かえるね」
「お、グレルサイドへ行くんだ」
「そう言ってたじゃんか……」
詳しい理由は言われなかったが、「グレルサイドに行きたい」と言っていたからこそ、一緒にここまで来たのだ。
ソフィに夢中だったパスカルには一切届いていなかったようだが、そこはちゃんと最初から説明がされている。確かに、あの遺跡の装置を確認したい、という間違いなく理由ではあったけれど……明るく知らなかったな〜と体を揺らすパスカルに、アスベルたちは苦笑した。
「パスカルさん、遺跡の中では色々とお世話になったね。ありがとう」
「あたしも一緒にグレルサイドへ行こうかな〜」
ゆらゆらと体を揺らしたまま、暗に「連れてって」と訴えるパスカルに、わたしとアスベルとリチャードさんはきょとんと顔を見合わせた。
確かに、パスカルはどこか目的の地があるわけではないらしい、というのは、一緒に過ごしていてわかる。しばらくわたしと一緒にいてくれていたのも、バロニアに行きたいと言ったわたしに付き添ってくれていただけ。
そして、わたしも今は無理にバロニアに行くよりも、アスベルたちと一緒にいた方が何かと安心かもな、と思っているので、このままグレルサイドに行きたいと言い出すのも不思議なことではないけれど。
それにしても、特にわたしを言い訳にするでもなく。一緒に行こうかな〜、なんてちらちらとこちらを見る様子は、アスベルたちからしてみると怪しく見えてしまうのだろう。アスベルはジトリとパスカルを見た。
「良からぬ目的があってついてこようとしているんじゃないだろうな」
「くくく……バレたか……」
「お前……!」
悪戯がバレた子供のように笑い出したパスカルに、思わずアスベルが身構える。
わたしは当然、棒立ちだ。だって、どう考えてもパスカルは「そういう人」ではないし。
そしてわたしの予想通り、彼女は殊更明るい笑顔で両手を上に上げた。
「ズバリ! あたしの目的はソフィと仲良しになることだよ〜ん!」
ああやっぱり。
まるで紙吹雪でもまき散らしそうなほどの笑顔で高らかに宣言するパスカルにわたしが苦笑すると、きょとんとしていたアスベルたちはようやくその意味を理解したらしい。
きっと予想と大きく違っていたであろうそれに、思わず素っ頓狂な声が出た。
「……はぁ!?」
「ソフィのこともっと知りたいし、調べたいし、触りたいの! 悪いけど、仲良くなったシオリ以外のあんたらに興味は無いですよ? アスベルと〜……なんだっけ?」
「リチャードだよ」
「ん、リチャードね。ねぇソフィ〜、あたしとアスベルとリチャードとシオリ、誰が一番好き?」
「アスベル」
「即答だね」
「むぉ〜! くやし〜! 仲良くなりたい〜! ソフィと仲良くなりたいよ〜!」
ソフィの返事に心底悔しそうに足を踏み鳴らす。
いいなぁアスベル。わたしもソフィにああやって隠れてほしい。パスカルの気持ちもわかるなぁ、なんて考えていれば、ついにリチャードさんが耐えきれないとばかりに噴き出した。
楽しそうな笑い声が響いて、それから、ふふふ、と肩をわずかに震わせながら、心配はいらないみたいだ、と顔を上げた。
「この人は……悪い人では無い気がするよ。一緒に行っても平気じゃないかな」
「……そうだな。もうしばらくこのままで行こうか」
彼女からはソフィへの想いしか感じない、と構えを解いたアスベルに、パスカルは先程までとは一転してにっこりと笑顔を浮かべる。
「ありがと〜、やっぱり旅は道連れって言うしね!」
「シオリも勿論来るよな?」
「もう一人で王都に行ける気なんてしないしね……」
それに今更だよ、と返せば、アスベルはそれもそうか、とわたしの頭を撫でた。
……わたしは彼に年上と見られていないんだろうか。
少し納得いかないが、まぁ頭を撫でられるのは嫌いじゃないので、わたしは黙って頷いた。
「それじゃ、グレルサイドに向かおうか」