44.彼女と、再会

下に降りると、そこにいたのは本当にシェリアだった。
久しぶりの姿を見て、思わず気分が高まって彼女へと駆け寄る。

「シェリア!」
「シオリ、それにアスベル……!? どうしてここに!?」

わたしの声に振り返ったシェリアは、わたしやアスベルの姿を確認して驚いたように立ち上がって、飛びついたわたしを抱きとめてくれた。
そのままくるりと一回転してから手を離して。そうしてわたしをまじまじと見た後、遅れてきたソフィに気付いて、すぐに彼女に駆け寄った。

「良かった……! あなたも無事だったのね。一緒にラントを出て行ったって聞いて、心配していたのよ」

はて。ラントを出て行った?
なんとなく自分の認識とは違うニュアンスを感じて首を傾げる。アスベルとソフィはリチャードの為に駆けつけたように聞いていたけれど、違ったのだろうか?
そういえばどうしてラントから離れたのかは詳しく聞いていなかった気がする。リチャードが襲われて、命からがら逃げ延びたところで再会した、というリチャード視点の話しか知らない。ラントで何かあったのだろうか。
考えていると、シェリアを羨ましそうに見るパスカルの視線に耐えきれなくなって、が困った顔でパスカルを見た。

「あのぅ……あなたは……?」
「あたしパスカル! よろしくシェリア!」
「あ……はい……よろしく……」

若干引き気味のシェリアに思わず笑ってしまう。
助けてよ、とばかりにじとりとした視線を向けられたが、わたしは気付かないフリをした。

「それでシェリア、どうしてお前がここに?」
「私はラント領の有志により結成された救護組織の一員として来たの。戦いで負傷した人々を助けたいと思って……」
「戦場の天使ってやつ? シェリアにぴったりだ」
「立派だよねぇ。人助けのために戦争してる場所へわざわざ来るなんて」

思わず小さく拍手すれば、からかわないのと軽く怒られる。
あははと笑って軽くシェリアにじゃれつけば、何故かソフィも混ざってきた。
すごくハーレムです。
と、少し悩む素振りをしていたアスベルがそうだ、と声を上げた。

「……そういう事なら、今からリチャードに引き合わせよう。その方が今後の活動もしやすくなるだろう」

確かに、許可があった方が動きやすいだろう。
そうだね、とみんなが頷くのを見て、わたしはチラリと塔を……正確にはその入り口の前に番をするように立つ兵士を見た。

「リチャード、デール公の所に行くって言ってたよね? どこかな?」
「あーちょっと待って。わたし、ちょっとマリクさんに話したい事があるから、先に行っててくれる?」

そう軽く手を上げながら言って、止めても行きますというのを訴えるために、少しだけ距離を取るように動く。
別に聞かれて困る会話をするわけでもないので、兵士の監視があったってかまわない。素直にそう伝えれば、多分兵士からマリクさんの居場所は教えてもらえるだろう。
そう思って少しだけ離脱することを伝えれば、当然アスベルは首を傾げた。

「教官に? 何の用だ?」
「戦ってる時も言われたんだけど、ほらわたし、迷子になって王都に戻れなかったから……」

あはは……と苦笑い。
この話題を出すと、無意識なのかもしれないがアスベルが顔を酷くしかめるのだ。だからあまりこの話題を出したくないのだが仕方ない。会いたい理由を黙っているわけにもいかないし。
しかし、今回は彼だけでなく、シェリアも顔をしかめたのを見て、やっぱり素直に言わなければよかったかもな、と思った。

「……シオリ、迷子になっていたの? 大丈夫だって、あれほど言っていたのに?」

しまった、と内心冷や汗をかく。
ラントを出る時、わたしを心配だから送ると言ってきたのはシェリアも同じだった。
そしてそれを断ったのももちろん同じで。
さすが幼なじみというか、再会した時のアスベルに通じる何かを感じて、わたしは逃げるように駆け出した。

「あ、あーだからわたしちょっとマリクさんに謝って来るね!」
「こらシオリ! まだ話は途中よ!」
「ちゃんと場所わかるのか!?」
「後で聞きますちゃんと道聞きますー!」

あーもう、二人そろって過保護なんだから!
わたしの方が年上だって、もう覚えてないんじゃないかな?