アスベル達の下に帰ると、バロニアについに進行することになっていた。
もう王都は目の前であると思えば当然だ。けれど、アスベルはリチャードの傍を離れ遊撃隊として行動する事になったのが、少し不思議だった。あんなに彼を守ろうとしていたのに。
しかも同行することになったシェリア曰く、ラントからも出てきてしまったみたいだし……ラントを守るんだーリチャードを守るんだーと言っていたのに、どうしたのだろうか?
聞いてみても、彼ははぐらかすばかりで何も言わない。シェリアも、彼が話したくないのならと目を伏せるから、結局わからないままだ。
まあ、話したくないことを無理やり話させるのはよくないと思うので、わたしもこれ以上は聞いたりしないけれど。
「……シオリ、アスベルを呼び捨てするようになったのね」
ふと、隣を歩いていたシェリアが、少し低い声で問いかけてきて、少し声がつまる。
なんだか怒っているような気がするが、気のせいだと思いたい。わたしは何も気づかない顔をしてへらりと笑いかけた。
「え? うん、罰ゲームで」
「何をやって罰ゲームする事になったのかしら?」
「あー……まぁとりあえず、今は先を急ごうか。どうやってバロニアに行こうね!」
「なんでそんな所そっくりなのよ……」
はぁ、とあからさまにため息をつかれて居心地が悪い。詳しくは聞かないであげるけれど、というのがものすごく伝わってくる。
ラント勢は過保護だし、不機嫌だととっても怖いなぁ、と。洗濯してもう血が落ちた肩にそっと触れたところで、南バロニア街道のとあるところで足を止めた。
「この先に城に通じる隠し通路がある。そこを通ろう」
「その隠し通路って……もしかして……」
アスベルとシェリアは目を合わせて、辛そうに視線を逸らす。
その様子に、相変わらずソフィに構っていたパスカルも首を傾げた。もちろんわたしも、どうしたんだろうと考えて……それから、城につながる隠し通路、という単語に、もしかしてと息をのんだ。
確か、シェリアが言っていたはずだ。「自分達は七年前、隠し通路を通って、そこで大きな魔物に出会った」と。
もしかしたら、この先の隠し通路が、彼女の言っていたその場所なのかもしれない。
わたしは反射的にシェリアの手をギュッと握った。
それがどういう意味でなのかは自分でもわからなかったが、驚いて見たシェリアに対しにっこりと笑ってみせる。そうすれば、シェリアは安心したように笑って手を握り返してくれた。
「これはアスベル様。もしや、殿下のご指示でこちらに?」
海辺まで来ると、兵士の一人がそう問いかけてきた。
彼の後ろにある洞窟が、きっとわたしたちの目的地だ。そして、見張りのようにそこに立つ兵士の姿を見て、アスベルはもしや、と問いかけた。
「殿下のご指示って……? もしかして殿下もここを進まれたのか?」
「はい。先程部隊を率いて突入を開始されましたが……」
「殿下が……よし、俺達もすぐに向かおう」