怒鳴られた、と言ってもいいその声を真正面から受けて、ビリビリと体が震えるのがわかる。思わずシェリアから体をひくけれど、ずっと掴まれていた手は離れない。それどころか、ガッシリと両肩を掴まれた。
それは以前わたしを抱きしめた時とは違って、力が入っていて痛い。その手からも瞳からも怒りを感じて、思わず体がすくんだ。
「っ!?」
「どうしてお前はそうやって無茶をするんだ!」
「べ、別に無茶なんて……」
「してるだろう!? フレデリックの時もパスカルと出会った時も遺跡でもウォールブリッジでも! 怖がって震えるくせに、どうして自分を粗末にするような事をするんだ!」
「粗末になんてしてないよ、怪我だってちゃんと……」
「ならこっちを見ろ!」
「っ!」
グイッと両頬を掴んで無理やりアスベルと視線を合わされる。そのことで、わたしは初めて自分が彼から目をそらしてしまっていたことに気付いた。
でも、だって、至近距離にあるあの優しい瞳に明らかに含まれた怒りを見るのが怖い。
ぶつけられる言葉も耳が痛い。そんな風に怒られたら怖い。視線くらいそらしたくてたまらなくなるし、何を言えばいいのかもわからなくなる。
だって、だって。無茶なんてしてないのに。
努力くらいはしたけれど、無茶じゃ、ない。偶然そう見えただけで、偶然怪我を沢山してしまっただけで、わたしは……
「怪我は治るとかそんなんじゃないんだ。怪我をされるのが嫌なんだ。お前が怪我をすると、シェリアもソフィもパスカルもリチャードも……俺も、凄く苦しいんだ」
怒っていたはずの声は、けれどだんだんと悲しみの色が強くなる。最後には苦しそうに吐き出される言葉に、心配そうに集まる視線に、わたしはやっぱり視線が下に落ちていく。
だって、だって。そんな、どうして。
どうしてそんな、真剣に心配をしてくれるんだ、彼は。
ソフィやリチャードみたいに守りたい友達なわけじゃないのに。
シェリアみたいに幼なじみなわけじゃないのに。
パスカルみたいに頼りになるわけでもないのに。
どこまでもわたしは他人なのに。
「だから頼むから……素直に守られてくれ。心配、させないでくれ……」
どうして、そんな風に、言ってくれるのだ。
「……ごめん、なさい」
「……先に進もう」
きっと言わなければいけない言葉は、他にもあった。他にも彼に伝えるべきことは、たくさんあった。
でもわたしは、それしか言うことができなくて。
それしか言えなかった自分が、嫌だった。