「それなら、オレも同行させてもらえないか」
扉越しに、現在ストラタという他国の管理下に置かれているといってもいい状況にあるラントを取り戻すためにラントへ侵攻するつもりのリチャードを止める為に、アスベルが先にラントへ話し合いに行つもりらしい……というのを聞いて、マリクさんは扉を開けながらそう切り出した。
借りを返したいという彼に、また一緒に戦ってくれるのかと、アスベルは嬉しそうに了承する。
「……シオリは、どうするんだ?」
マリクさんの後ろにいたわたしを見て、聞きづらそうにそう問いかけてきたアスベルに、やっぱり居心地の悪さを感じてしまう。
……ついてきてほしくないなら、素直に言えばいいのに。
アスベルは優しいから、こんな喧嘩みたいになっている状態でもわたしを庇ってくれるから、なんだか辛い。
「ラントに侵攻なんてさせる気は無い。しかし、場合によってはヒューバートと……俺の弟と戦う事になるかもしれない。だからシオリ、無理は……」
「……シオリ、一緒に行かないの?」
ポツリ、そうソフィに言われて、わたしはバッと顔を上げた。
無表情に近い表情だけれど、まっすぐにわたしを見るソフィに視線を返して、わたしはこっそりとこぶしを握る。
……わたしは、確かに、とても弱くて。ダメなこともたくさんあるけれど。ついていきたいって、思う理由は、確かにある。
わたし、みんなのこと、好きなんだ。できれば、これからも一緒にいたいって思っている。ソフィがわたしを守ってくれると言ってくれたとき、わたしも彼女を守りたいと思うくらいには、好きなのだ。
でもアスベルが嫌がるなら……と、彼のせいにしようとしたけれど。でも、それじゃあさっきマリクさんに言われたことを無視する選択肢だ。
わたしが、わたしがしたいのは。
「ごめんなさいアスベル。わたしは付いて行きたいって、思うよ」
みんなと一緒にいたいから。
そう言葉にすれば、それはすとんと気持ちいいくらいにわたしの胸にしっくりした。
言葉にする度に実感できる。わたしはみんなと一緒にいたいと。
「確かにわたし弱いし、自覚はないけど無理してるみたいだけど……でもわたし、みんなといたい、かな」
そうだ、わたしはみんなといたい。
それは異世界という不安からかもしれないし、他の人を知らないからかもしれない。でも今のわたしはみんなと一緒にいたいと思っていて、それを許してくれるなら。
わたしは“変わりたい”と思った。
しばらくアスベルと見つめ合う。
ラントから一人でバロニアに向かうと言った時よりも、もっと強く。目をそらさずに。
そして今回もまた、アスベルが先に折れてため息をついた。
「……わかった。シオリがそう言うなら」
「ありがとうアスベル!」
「ぃやったー! じゃあまた一緒だねシオリ! お祝いにぎゅっとしようか〜」
返事を聞くやいなや、勢い良く抱き付いてきたパスカルを抱きしめ返して、思わず満面の笑顔を浮かべてしまう。
ソフィとシェリアもすぐに傍にやってきて、代わる代わる言葉を投げかけてきた。
「お願いだから、シオリは私の傍を離れないでよ。詠唱中の援護に専念して」
「大丈夫。シオリもシェリアもパスカルも教官もアスベルもみんな守る」
な、なんだかハーレムな気分で照れるなぁ。
というより、思っていたよりもずっと、みんなに好きだと思ってもらえていたみたいで、素直にうれしい。うれしすぎてちょっと、ど、どうしよう。絶対に今顔が変だ。デレデレしてる。
えへへぇ、なんて気の抜けたわたしに少し困ったような視線を向けていたアスベルは、やがて肩をすくめると、マリクさんに声をかけた。
「それでは教官。さっそくラント領へ向かいましょう」