67.砂漠の、国

ストラタの港であるオル・レイユ港に着いて、真っ先にパスカルが珍しそうに辺りを見渡した。
ゲームなんかで見たことがあるような、まばゆい砂にくっきりとした色の木々は、いかにもわたしが想像するような砂漠の国だ。問題は、暑さと太陽の眩しさで見ていられない。しっかりと目を開けていられないことだろうか。暑いとか通り越してもう眩しいのだ。目が痛い。

「ふ〜ん、ここがストラタの港か。ここから首都のユ・リベルテまでどれくらいで行けるのかな」
「失礼。あなた達は首都まで行くつもりなのか? 今はロックガガンが道を塞いで通れなくなっていると聞いたぞ」
「ロックガガン……?」

傍でわたしたちの会話が聞こえたらしい、たぶん服装的にストラタ軍の関係者だろう男の人が近寄ってきて、親切にそう教えてくれる。
その内容にある聞き慣れない単語に、わたしはソフィと一緒に首を傾げた。
ロックガガンとはなんだろう。
ロックな音楽をガガーンとかき鳴らす……わけはないか。なんて考えていると、マリクさんがわかりやすく説明してくれた。

「岩石獣とも呼ばれる大型の魔物だ。ロックガガンは知能も高くて性格もおとなしく、人に迷惑をかけないと聞いたが」
「それが最近では途中にあるセイブル・イゾレの街から先の街道周辺で暴れまわっているんだ。危ないから軍が街道を封鎖して人が近付けないようにしているそうだ」
「ご親切にありがとうございます」

シェリアが頭を下げると、彼は気にしないでと手を挙げて去って行った。
ううん、爽やかな好青年である。
一方で同じように爽やかな好青年である我らがアスベルは、不思議そうにマリクさんを見ていた。

「教官、ストラタの魔物の事なんてよく知ってましたね」
「オレはウィンドル軍に入る前はストラタにいた事もあるのでな。ロックガガンはストラタ国民の間で大切にされているらしい」
「じゃあ、もしかして可愛いんですか?」

大切にされるなら、されるだけの理由があるのだろう。岩石とはいえ造形はものすごくかわいいとか、なんだか愛嬌があるとか、そういうことだろうかと聞けば、どうだろうなと返される。
まあ、「可愛い」なんて主観的なもの、人それぞれだから答えられなくても仕方ないか。この感じだと、誰が見ても可愛い、というわけでもなさそうだし。地域で愛されているキャラクターとか、その程度なのだろう。
一体どんな魔物なんだろうか……少しワクワクしてしまっていれば、パスカルも同じように体を揺らしているのが見えた。

「アスベル。どうするの?」
「状況がわからないことにはなんとも判断がつかない。ひとまずセイブル・イゾレの街を目指そう」