72.お守りの、効果

「やったか」

剣を納めて、大きく深呼吸をする。
分裂までしやがった寄生虫の親玉は、先程ようやく動きを止めたところだ。
シェリアのアステリズム・ラインが一気に敵の体力を削ってくれたのがありがたかった。

「寄生虫の問題は片付いたが、肝心の出口はどこだ?」

ありがたいがしかし、ゲームのように倒したら次に進める、なんてわけがないのである。
辺りを見渡したところで、外へ出れそうも無い。アスベルはがっくりとうなだれて、ヒューバートさんから貰った御守りを握り締めた。

「早く信書を届けに行かなくてはいけないのに……」
「御守り、破れちゃった……」
「あれ? 何か出て来てるよ? 粉?」

ソフィに指摘されて御守りに目を向ければ、確かに青い袋は破れて中身が出てしまっている。中身はどうやら小さな粉のようなもので、さらさらと指の隙間から零れ落ちてはアスベルの手の上に溜まっていた。
パスカルが興味津々とばかりに近付いて、それをよーく見る。御守りの中って何が入っているんだろう。

「どれどれ見せて? へ、へ……へくしょん!」
「コショウだ!」

元気のいいくしゃみだ。そしてくしゃみしたらコショウって……と少し首を傾げるが、本当にそうらしい。
だが、何故コショウなんだ。
なんで御守りにコショウが入ってるんだ。
誰かに聞きたくてたまらないが、どうやらそれどころではないらしい。
足下から腹の底に感じ始めた揺れには覚えがある。

「……揺れてる」
「これって……うわ!」

途端に強い風が吹いて、今度はわたし達を吸い込むように強さを増して、わたしは足が地面から離れるのを感じた。



瞼の裏に強い光を感じて、ゆっくりと意識を浮上させる。
なんだかざらついた熱い地面と、焼くような強い日差し。
ひょっとして外……? と目を開けるが、みんなの気配を感じるのに視界が真っ白で何も見えない。
眩しい。

「ここ、外……ううっ!」
「や、やだシオリ、しっかり!」

気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い痛い眩しい。
しかもなんてタイミングだ。またあのまたあの頭痛と寒気が襲ってきて、誰かがわたしに話しかけてくれているのに会話が頭に入らない。
眩しいからだろうか。暑いからだろうか。わからない。眩しい。痛い。苦しい。力が抜けていく。

わたしはまた、意識を手放した。