マーレンさんと少し話をして少し眠って、わたしは日の落ちてきた窓の外を睨んだ。
一体なんだったんだろうだろうか、あの痛みは。
もう何度目になるのか……ラントを出た時、ウォールブリッジで、二回目のラントで、そしてさっきと、何回も不定期に訪れる激しい頭痛。
こんな事、少なくとも元の世界では一回も無かったはずだ。
もしかしてこれは、この世界に飛ばされることになった理由の一つ、だったりするのだろうか。頭痛が理由なんてどういうことなのかわからないけれど、もしかしたら、何かを忘れてしまっているせいで頭が痛いのかもしれない。
だとしたら、わたしは一体何を忘れているんだろう。
「……怖い」
ポツリ、無意識に出てしまった言葉に、慌てて口を押さえた。
良くない。こういう言葉を口にするのは。余計に不安になる。
吐き出した言葉をなかったことにしたくて息を飲み込んでいると、ふと、窓の外にヒューバートさんにそっくりな人を見たような気がした。
どうして彼がここに。わたしは慌ててそれを追いかけようと外に出る。多分大統領政府の方向だ……と小走りに進めば、丁度広間になっている所で声をかけられた。
「……シオリ!」
「……アスベルにみんな。お帰りなさい」
みんなの顔を見て、心が落ち着いていくのが凄くよくわかる。
ああ、良かった。ちゃんとみんながいる。みんなには笑えてる。良かった。
「……何かあったのか?」
「え? なにが?」
「いや……」
彼はよく鈍感とか言われるけど、変な所が鋭いと思う。
でも、これはまだ触れられたくない。わたしは無理やりに話を逸らす事にした。
なんだか暗い表情のみんなを見て、首を傾げてみせる。
「それより、みんなはどうだった?」
「それが……それについては、大統領にも報告するから、その時に一緒に説明する」
「うん、わかった……?」
頷こうとして、ぎゅっと腰に抱き付いてきたソフィを見る。
彼女の表情は見えないが、少し力がこもっていて痛い。
わたしは頭を撫でながら、なるべく優しく名前を呼んだ。
「ソフィ?」
「……シオリは、リチャードとも友達だよね?」
「うん、友達だよ」
「シオリも、リチャードと戦ったら悲しい……」
「……ソフィ……?」
ポツリと呟いた後、彼女は口を開いてはくれなかった。