79.闘技場、強者が集う地

闘技島とはその名の通り、闘技場が存在する孤島だ。三国のどの国にも属さないそこは、ゲームでいうやりこみ目的の闘技場、みたいな場所だという認識でそう間違いはないと思う。
ライオットピークと呼ばれる試合の場に続く階段だけが中央に聳える光景はなんだか圧巻だ。参加するだろう人たちも、ムキムキというわけではないけれどやたらと屈強そうな顔だちをしている。あっちにいるのは観戦目的の人かな。おお、軍人さんみたいな人もいる。

「例の人物はまだ来ていないようですね」
「あれ、フェンデル軍?」
「……そのようだな」
「へ〜、軍服かっこいい!」

階段の下で銃を持った黒い格好には見覚えがある。初めてラントに行った時、ちらりと見えた彼らは確かに同じ服装だった。
あの時は色々と混乱していて気付かなかったが、黒を基調にして赤を入れたフェンデルの軍服はかっこいい。……今は明確に敵対しているわけじゃないし、ちょっとくらい、軍服をまじまじと見たっていいよね。

「お前も新型を支給されたのか。性能はどうだ?」
「今までとは出力が段違いです。輝石に含まれる原素を効率的に引き出せていますね」
「へ〜?そんなことが出来るようになったんだ。見せて見せて、ふんふん、輝石があるのはここか……そんで変換回路が……あれ?」
「なんだ貴様は!?」

いつの間に近付いたのやら。パスカルが軍人のすぐ隣に立っていて、興味深々といった感じに銃をのぞき込んでいる。
当然のように怒られて振り払われたが、彼女は全く気にしていない。それどころか、何か疑問に思ったのか、階段を登っていった彼らの後を追おうと走り出した。

「あの機構誰が作ったんだろ?おかしいな……もう一度見て来よっと」
「軽率な行動を取らないで下さい。目を付けられたらどうする気です」
「大丈夫大丈夫、遠くから見るだけだから。シオリも一緒に行く?」
「え、いいの? うん! あの軍服もっと見たい!」

ヒューバートさんのため息が聞こえたが、まあ気にしなくていいだろう。別にここには、先に潜入しているというストラタのスパイから話を聞きに来ただけだし。トラブルは起こさないに越したことはないけれど、起こしたところで用事が済んだらとっとと離脱していい場所だし。
そんな風に自分を納得させて、パスカルと二人で先ほどの軍人を追いかける。なんだかちょっと子供に戻って探検しているみたいですでに楽しい。階段を登った先にいた目的の人たちを、わたしたちはしっかり、少し遠くからそれを眺めた。

「……パスカル、ああいうの好きなの?」
「ん〜? いや、あの機構、あたしが昔考えたのとそっくりだなって思ってさ。やっぱり遠くからだとわかんないな〜」
「あっちょっとパスカル!」

軍人たちがその場を離れた途端、パスカルはダッと走り出して、そこに保管してある銃をひょいと持ち上げた。
それからくるくると回しながら、何か難しい事を呟いているが、正直それどころではない。だってこれは見つかったらあらぬ誤解を受けるのがわかりきった状況だ。

「貴様何をしている!」

慌てて彼女の手を引こうとするがもう遅い。そりゃあ、武器を置いて長時間離れるわけないよね。戻ってきた軍人が怒鳴るのを聞いて、ほらやっぱり怒られた! と頭を抱えたくなる。
とにかくこれ以上問題を起こすわけにはいかない。わたしはパスカルを引っ張って、急いで階段を下りた。