「強制参加かよ……」
先ほどの軍人はきっちり受付の人にも言っておいたようで、わたしとヒューバートさんの参加がすでに受付完了していた。名前も知らないはずなのに、きっちりと見た目なども含めて登録していたようで、絶対に参加させるという強い意志を感じる。
チーム戦であったことは幸運だろう。話し合いの結果わたし、ヒューバートさん、アスベル、パスカルで出場する事になった。
軍服かっこいいと言っただけなのに、何故闘技場に参加しなければならないんだ……と俯けば、アスベルが元気づけるように肩を叩いてきた。
「大丈夫だ、シオリ。ちゃんと俺が守るから」
「……まだ、守ってくれるんだ」
「え?」
「あー、いや、なんでもない」
かつて守りたかったソフィも、シェリアも、ヒューバートさんも。今は彼の近くにいるから、わたしにまで手が回らないかと思った、という言葉は飲み込む。
……嬉しい、だなんて思った事も、飲み込んだ。
「いつになったら進展するのかねぇ」
「……そんなことより、ようやくお出ましのようですよ」
数戦のあと。ヒューバートさんが顎で示す先には、先程の軍人達が立っていた。
それぞれに銃を構えて、戦闘エリアへと歩いてくる。
「下で野垂れ死ぬかと思ったが、それなりに実力はあるようだな。貴様達の大切なお友達ならあそこにいるぜ」
後ろで拘束されている女性軍人に、ヒューバートさんが僅かに目を細めた。
そういえば、彼らが先ほどちらりと言っていたけれど。わたしたちが会う予定だったストラタの密偵は、スパイ容疑をかけられて捕まってしまっていたらしい。彼女がそうなのだろう。つまり、わたしたちの目的は彼女を助けないと達成できない。
ヒューバートさんは一瞬だけ細めた目を、眼鏡の位置を戻すことでごまかすと、すぐに平然とした顔に戻って、彼は不敵に笑ってみせた。
「さて始めるか。せいぜい楽しませてくれよ、俺の銃の威力は半端じゃないぜ」
「御託は結構。あなたはこの双剣の前に散る運命なのですから」
「ほざけ!」
試合開始の音が響いて、一気に地を蹴る。
みんな銃を持つ事から、術を詠唱するより近距離攻撃の方がいいと思ったからだ。
パスカルの術距離内で彼女を狙う敵に狙いを定めて剣を振るう。
「我が破りしは平穏なる障壁、具現せよ! グリムシルフィ!」
翠緑の使者であるグリムシルフィを召喚して、辺りの広範囲を切り刻んだ。
届かなかった人にはヒューバートさんが双剣を回転させながら突っ込み、雷を降らして動きを止めて行く。
「雷牙招来!」
「ほーらよっ!」
意外に軽い掛け声と共に、銃弾が飛び交う。
アスベルはそれを器用に剣で弾きながら突き進み、勢い良く蹴り飛ばし、そしてわたしの方へと突き飛ばした。
「シオリ!」
「了解! 落流星!」
勢い良く力任せに剣を叩き付ける。単純すぎる技だが、威力は一番高い。
なんとか気絶できた彼から残った上官に視線を変えるが、そちらも勝負が決するところだった。
「覚悟を決めろ!」
そう高らかに叫んだヒューバートさんが、双剣から双銃に切り替えた武器を無数に乱射する。
「派手に踊れ! アンスタンヴァルス!」
最後の音が、試合終了の合図だった。