9.その、気配

「アスベル!?」

ソフィを抱き留め、こちらへ走ってきたのはアスベルだ。
その後ろにはマリクさんにシェリアとヒューバートくん、更にリチャードまでもがついてきている。

「誰か〜! あたしも守って〜!」

どうしてここに、と意識を逸らした隙にパスカルの悲鳴が上がった。
いけない、とそっちに走ろうとすると、それより先にヒューバートくんがパスカルと魔物の間に入ってきた。

「手間のかかる人ですね」

おお、いいとこどり。
だがパスカルは嬉しそうにソフィ達の方へ走って、喜びを体中で表現した。

「みんな〜ありがと〜助かった〜! それでは再会を祝して、かんぱ〜い!」
「それはあれを倒してからだ」
「あり?」
「だけど、簡単には倒せないよ」

みんなのノリが懐かしい。こんな時なのに頬が緩みそうだ。
なんて思っている間に、アスベルが姿勢を低くして真っ直ぐに魔物へと走っていくのが見える。
……って、そんなんじゃ効かない……!
そう叫ぼうとして、止めた。彼の太刀筋がいつかの時のように輝いて、それが確かに魔物のダメージへと繋がったから。
その姿に、心臓が疼いたから。

「!?」
「あ……」
「おお〜、これならやれそうだ!」

パスカルの陽気な声が聞こえる。
でもわたしは……ソフィも、アスベルから目を離す事が出来なかった。
どくりどくり、心臓の鼓動がやけに耳につくのは、決してアスベルに対する好意だけではない。
その内にある、そしてわたしをこの世界に繋ぐ存在。

「今の、ラムダの力……」
「やっぱり、ラムダ……」

ラムダの力の、気配。