「うわ、なんか増えてる」
フェンデルの大輝石がある氷山洞穴の一番奥。
かつては重々しい装置と大輝石だけだったその場所には、換気扇みたいな羽だの人と同じくらいのサイズのヤカンだのが増えている。
それも装置の一つのようで、パスカルはどこか誇らしげに笑った。
「いろいろ頑張ったからね。無理に出力を上げる事は出来ないから、こうやってジャバッてやってタパタパ〜っと……」
なるほどわからん。
擬音の多い説明を始めたパスカルに苦笑していると、前を歩いていたソフィが立ち止まった。
気付かず進もうとするパスカルの前に腕を出して、彼女は鋭く言葉を発する。
「パスカル、駄目」
「え、なにが……うひゃっ!?」
ブゥンと空気を切る音が響いて、彼女の頭上を魔物が通過する。
よく見れば、同じ魔物が大輝石の周りで数体飛んでおり、わたし達に威嚇するかのように羽をばたつかせていた。
「こんな所にまで魔物が?」
「装置が壊れちゃう! 倒さなきゃ!」
一斉に武器を構える。
半年前と同じようにパスカルの近くに待機して、詠唱を始める彼女を守る為に剣……正式に義父子関係になった記念にと、マリクさんに貰った物だ……で魔物を切りつけた。
「させないよ、星牙!」
「おとなしくしなさい! シェルスロー!」
ソフィが高く跳んで粒子の光を投げナイフのように飛ばす。
それは全て命中するが、思うようにダメージに繋がらない。
見た目以上に防御力が高いのかな。切りつけた腕が、少しは鍛えられたはずなのにじぃんと痺れる。
「みっどりの〜トゲトゲ!」
放たれた風の衝撃にも魔物は怯まない。
さすがにみんなの表情に焦りが浮かび始めた。
「ちょ、ちょっと強くないっすか?」
「ひぇ〜なんなのこいつ〜!」
「はあっ! せぇい!」
なんとか距離を取ろうとするパスカルを庇う為に、ソフィが回転するように蹴り飛ばす。
しかし魔物が勢い良くソフィに体当たりをすると、彼女の小さな体は簡単に弾き飛ばされた。
「ソフィ、危ない!」
彼女に代わるようにして魔物と対峙するわたしの耳に届いたその声は、彼のものだった。