14.あなたに、声が

「あたしが教官に報告ついでにみんなを呼んだのって、フォドラの様子がおかしいからなんだよ」

そう前置きを話して、パスカルはわたし達をぐるりと見回した。

「気付いたのはポアソンとばーさまなんだけどね。里のみんなとフォドラの観測を進めてたんだよ。そしたら二カ月ほど前から地表から原素が溢れ出している場所があるのがわかったんだ」
「つまり、活動を休止していたはずのフォドラの核が動いてるってこと? もしかするとフォドラの核が、魔物に進化を促したのかも……フォドラの核があらゆる生命の素であるのなら、その可能性は否定出来ないわ」
「さ〜すがお姉ちゃん! やっぱ頼りになるぅ! というわけでフォドラに調べに行きたいからシャトル貸して!」

ひょいと手を差し出したのはアスベルに対してだ。
今現在、シャトルを持っているのはアスベルなのである。
というか、パスカルはそんな重要なことを忘れてわたし達と遊んでいたのか……

「調査に行けば何かわかるのか?」
「ここにいるよりは色々とわかってくると思うよ」
「なら、俺達もフォドラの調査に行こう」

話は再びフォドラに行くということでまとまったようだ。
この後の予定を話し合うみんなを眺めながら、ふと、ちょっと思いついて心の中でラムダを呼んでみる。
わたしの声って届いたりするのだろうか。一方通行も、ちょっと嫌なんだけど。

(……ねぇ、ラムダ。わたしの声って君に届いてるのかな。)
“……何の用だ。”
(あ、聞こえるんだ。いやぁ、なんか話一段落したみたいだから。たまにはわたしとお話ししたっていいでしょ? なんかこうテレパシーって感じでかっこいいし。)
“おいていかれるぞ。”

声に言われて周りを見ると、みんなは既に歩き出している。
慌てて追いかけようとして、わたしは誤って自分の足に躓くようによろめいた。
言葉うわ、かっこ悪い。

「シオリ、」
「大丈夫かい?」

振り向いてくれたアスベルより先に、リチャードがわたしの手をとった。
これ以上転ばないようにと気を使ったその手の差し出し方はいかにも王子様然としていて、さすがに少し照れてしまう。

「うん、ありがとうリチャード」
「いいや。それより気を付けて」
「うん」
“もっと周りを見るのだな。宿主を経由しないお前との対話は、実際に時が流れている。”
(ああ、だから一瞬であんなに声が聞こえたのか……ってそうだそうだ、これを一番伝えたかったんだよ。)

今度はちゃんとみんなの背中を見ながら歩く。
ひとつ深呼吸して、わたしはラムダに笑った。

(おはよう、ラムダ。)