シャトルに乗ってフォドラへ向かう……前に一度、ストラタへ大統領に報告に行こうという話になった。
ストラタにだって大輝石はあるのだ。絶対に安心だなんて言えるはずがないから、先に調査しておこう、とのことらしい。
「ソフィ?」
けれど里の出口まで来たところで、不意にソフィが立ち止まってしまった。
それまでもふさぎ込んではいたけれど、ついに歩くこともやめてしまったらしい。うつむいている彼女にシェリアがゆっくりと近付いて、覗き込むように表情を見る。
「どうしたの? 言いたい事があるのなら、我慢しないで言っていいのよ?」
シェリアが優しく紡いだそれに、ソフィは少し迷うようにして……それを言った。
「パスカル。わたし、人になりたい」
まっすぐに。すがるように。彼女が言った言葉は、きっとパスカルに会いたい理由そのものだった。
たった一言で済むそれを求めてはるばるここまで来たのだと理解して、わたしはひゅっと息を呑む。
対するパスカルはいつもと何も変わらず、ケロッとした様子で答える。
「今でも十分人じゃん。ちょーっと体の作りが違うってだけだよ」
「ううん……みんなとわたしは全然違う。アスベルもシェリアもヒューバートも……リチャードも教官もパスカルも、いつかみんないなくなる。だけど、わたしは……わたしも人になれたら置いていかれない? どうしたら人になれるの? 教えてアスベル」
「それは……」
アスベルは答えられない。
答えられないアスベルに、ソフィは切なそうに笑った……いや、笑おうとして失敗した、泣きそうな表情をした。
「そうだよね……無理、だよね」
小さな呟きには、明らかに落胆の色が滲んでいる。
何も答えることができず、思わず俯いてしまったみんなを見て、ソフィはついと自分の目元を拭った。
その手は、決して濡れてはいない。ぬくもりはあれど無機質な……機械の体では、涙は流せない。
「涙……出ない。とても悲しくても、わたしはみんなみたいに泣けないんだね。わたしも……わたしもみんなと一緒になりたかった。アスベルがお父さんでシェリアがお母さんでシオリがお嫁さんで。みんなのいるお家に、人の子として生まれたかった」
「ソフィ……」
思わず、シェリアがソフィを抱きしめた。
そして、ソフィの代わりとばかりに泣き出してしまったパスカルを、わたしは慰めるように抱き締める。
そんなわたし達を……特にソフィを切なげに眺めて、リチャードはアスベルに言葉をかけた。
「アスベル。こんな状態のソフィを連れて行くのはどうなんだろう」
「アスベル……私、ソフィとここに残るわ。ソフィの気持ちが落ち着くまでは、長旅をさせるのは無理だもの」
「あたしも残るよ。里で少し気分転換させてあげたいしね」
「わたしも……」
「兄さんはどうしますか」
投げかけられた言葉達に、アスベルは悩むように視線をさまよわせた後にグッと目を閉じて……そして、うなだれるように頷いた。
「今は、少し離れて考えた方がいいかもしれないな」
「……わかりました。俺もストラタへ行きます」
「では、男四人でストラタに行くとするか」
それでもソフィを気にするように足踏みをする彼に笑いかければ、彼はようやっとその重い足を踏み出した。
「ソフィのこと、頼む」