「それだからね、あたしはバナナとバナナパイがいかに素晴らしい物であるかを言いたいわけでね……」
パスカルが演説さながらわざわざ台の上でバナナパイについて語る。そのことに、カニタマーなるソフィが何か口をはさもうとしたが、それが音になる前に、パスカルが嬉しそうに大きく手を振ったので、その討論は中止となった。
彼女の視線の先を追いかければ、ストラタに行っていた男性陣が歩いて来るのが見える。用事は済んだようだ。
「おかえり〜! ストラタは大丈夫だった?」
「とりあえず発生した魔物を倒して来ましたが……今後も魔物が発生しないという保証はどこにもありません。やはり原因を叩かないと」
「そうだね……早いとこフォドラに行かないと」
その会話に、ソフィは一人俯く。
やっぱりまだ、彼女を旅に連れて行くのは……
「ソフィ」
戸惑いの空気を流したわたし達のそれを晴らすように、アスベルが優しく、でも強くソフィの名を呼んだ。
寂しげにアスベルを見上げた彼女を見て、アスベルは頭を下げる。
「ごめんな……ずっと一緒にいてやる約束が出来なくて。俺はお前より先に死んでしまう。けれどお前と一緒に考えたり悩む時間くらいは十分にある」
「一緒に……」
「俺はこれからお前と、親子として、一緒に考えていこうと思っている。ソフィ・ラント。これからは、これがお前の名前だ」
「ソフィ・ラント……?」
「お前は今日から、俺の本当の家族になるんだ」
その言葉に目を見張ったのは、決してソフィだけではない。
みんながその意味を確かめようと二人を見つめる中、最初に声を出したのはリチャードだった。
「ソフィを正式に、ラント家の子として迎えるという事かい?」
アスベルはうなずく。
リチャードを見て、みんなを見て。そして、ソフィをまっすぐに見て。
家族になりたいんだと、そうはっきりと宣言する。
「親父が、俺やヒューバートの事を思ってくれたように……そして今でも、俺の心の支えになってくれているように。お前の支えでいられるようになりたいんだ。小さい時は俺の方が子供だったから、ちょっとおかしな親子だけど」
「おかしくないよ。とっても……嬉しい」
そう笑ったソフィは、以前ラムダを消さなくていいと知った時のあの笑顔にそっくりだった。
それまでの悲しそうな表情を溶かして、ほわりと頬を赤らめて笑う彼女に、様子も見守っていたみんなも表情をゆるめる。
「兄さんの子供になるなら、ぼくとも家族、ですね」
「そうなると、弟くんはおじさんになるのかぁ〜」
「なっ!」
「ヒューバート叔父さん……語呂的には似合うんじゃない?」
「となれば、未来のために魔物の脅威を取り除かないといけないな」
あはは、と笑い声が漏れて、だんだんと笑顔が広がっていく。
うん、大丈夫だ。きっと大丈夫。
アスベルはソフィに、ちゃんと何かを残してあげられる。
親子になったアスベルとソフィを見て、ふふっと笑う。元から親子みたいだったけど、と思ったのはシェリアも同じらしく、わたし達は目を見合わせてまた笑った。
その時一瞬、だれかがいたような気がして後ろを見るが、やはり誰もいない。
里の人を間違えたかと、わたしは一人首を傾げた。