19.いつか、そんな

フォドラへ向かうシャトル内は、ソフィの事でホッとしたのか、とても落ち着いた空気が流れていた。
……ソフィが、マリクさんの所に行くまでは。

「教官。教官はシオリのお父さんなんだよね?」
「一応そうなっているな」
「じゃあお義父さん。娘さんをわたしにください」
「ぶっ」

もしここで何か飲んでたら盛大に噴き出していただろう。
まあ漫画じゃないから何も飲んでないけどさ。でもびっくりして空気を噴き出してしまった
大げさなリアクションをとったのはわたしだけではない。
ちょうど席の近く……座る席は気まぐれなので、本当に偶然そこにいたアスベルも「ソフィが……」とか言ってるし、ヒューバートくんもしきりに眼鏡を直している。
前方にいるシェリアとパスカルやリチャードはわからないが、真剣な様子なのはソフィとマリクさんだけだ。
わたしは必死に動揺を抑えて声を出す。

「ソソソフィ? いきなりどうし……」
「お嫁さんにしたい時はこう言うんでしょ? いつかアスベルが教官に言うよって、リチャードが言ってた」
「り、リチャード!?」

バッとアスベルと共にリチャードを見る。
少し前の方に座っていた彼はわたし達に気付くと爽やかに笑ってみせた。
実に王様らしい爽やかな笑顔だ。
ロイヤルスマイルと名付けてやる。

「ははは、そんなことも言ったね」
「はははって、お前……」
「だいたいそんな、ア、アスベルが、マリクさんに……っ」

「教官……いえお義父さん。娘さんを俺にください」
「ふ、いいだろう。幸せにしろよ」
「はい! シオリ、これで正式にお前は俺達の……俺の家族だ」
「アスベル……」


なんて言うわけがない、ない、けどその、それはそれで悪くないなー……みたいな……こと、思ったり、思わなかったり……

「な、シオリ。確かそうだったよな?」
「どわっはぁはい!? なにがでございますかっ!?」

マリクさんに呼ばれて、思わず大声を出してしまう。
しまったトリップしていた。
いやもうしているのか。
いや違くて、ああもう!
混乱していれば、マリクさんは訝しげにわたしを見たけどとりあえず言及はしないでくれた。

「……お前聞いていなかっただろう。今の台詞を言うのはソフィで三人目だったよな?」
「あ、はい、そうですね……」

ああうん、そういう話かと素直に頷けば、何故かみんながえっと声を上げた。
それはヒューバートくんやソフィやアスベルが中心で、前方の女子達はまた違う話をしているように見える。
ヒューバートくんはついに眼鏡を拭きだして、明らかに動揺した様子でわたしに問いかけてきた。

「もう既に二人の人物が姉さんに言い寄ってきたんですか?」
「シオリが……二人の……」
「やっそれはちょっと違うんだけど……」

思わず、言いよどむ。
言われたのは確かだけど、言っていいのかなー……

「アスベル〜。アスベルはもうソフィのお父さんなんだよね?」
「あ、ああ、そうだが?」

悩んでいる間にパスカルがやってきた。
どうやら後はフォドラの引力に身を任せるだけのタイミングらしく、操縦を放ってきたらしい。
彼女はキッと真面目な表情を作って、そして言った。

「アスベル……いえお義父さん。娘さんをあたしにください。幸せにします」
「駄目だ。ソフィはまだお嫁になんて出しません」
「即答……」
「というかパスカルさん、あなたという人は……」