26.残された、データ

しばらく進むと、少し開けた場所に出た。
通路の途中に機械だけを取り付けたような場所ではあるが、それでも立派に機能は果たしていたようである。

「研究室といったところかな」
「ふむふむ……」

すっかり慣れた手つきでパスカルが機械を作動させる。
ウィーンと音を立てて画面を広げたそれは相変わらずわたし達には読む事が出来ない。
覗き込んだヒューバートくんもよくわからないといった表情で彼女に問いかけた。

「何が書かれているんですか?」
「データが破損していて全部は読めないな〜。研究の記録かな? これは」

ザザッとノイズと共に映像が浮かび上がる。
映っているのは片眼鏡の男性だ。
研究者然とした彼の後ろには慌ただしく動く研究員達が見える事から、恐らくパスカルの言う通り研究記録だろう。
昔こういう風に記録を残す元刑事の出るゲームをやった事がある。

“フォドラの核に変化の兆しあり。詳細は未だに不明。調査員の派遣が決まった。早急の解明が待たれる”
“コーネル博士の見解を求めたが返事は来ていない。ラムダの研究成果が何かしらの謎解明に繋がると踏んでいるのだが……エメロード君への協力要請を出すことになった。真相の究明に繋がる事を期待している”
“リトルクイーンの誕生。我々はあれとどのように向き合えばいいのか。派遣した調査隊の第一次隊は全滅したが……第二次隊の若干名の生き残りが、サンプルを持ち帰る事に成功した。しかし、生き残った者達も状態が芳しくない……恐らく、長くは保つまい。彼らの犠牲を無駄にしない為にも……サンプルの詳しい調査を進めねば……”

ブツッと、映像が途切れた。
どうやらここまでらしい。
短い再生記録ではあったけれど、この間にわたし達と決して無関係ではない名前がいくつも出て来た。

「ラムダに、エメロード。これは意外な名前が登場しましたね」
「それに、リトルクイーンか」
「一体何の事を示しているのだろうね」

悩むみんなに振り返ろうとして、わたしはラムダの声が聞こえるのに気付いた。
どうやら同じように考え出したアスベルに話しかけているらしい。

“フォドラの核が生み出す原素は、フォドラの核から生まれたものに影響を与える。それだけの事だ”
“我はフォドラの核から生まれし者。核の原素の流れを知るなどたやすい事だ”

そんな能力があるなら早く言ってよ。
そう言いたいが、一般的には無言の二人に話しかけるのはなんとなく気が引けて、会話は続いているようだが極力聞かないように努める。
でも、今の話だと……ラムダによって生かされたわたしにも、何かあったりするんだろうかどうなんだろうか。
黙り込んだアスベルにソフィが気付いたらしい。彼女は心配そうに彼を見上げていた。

「アスベル? どうしたの? 目が……」
「俺なら大丈夫だ。ソフィこそなんともないか?」
「うん。平気。少し変な感じはするけど。……なんだろうこれ。懐かしいような、よくわからない」
「研究施設はこの奥まで続いているようだな」
「もう少し調べてみようか」