魔物が完全に沈黙したのを確認してから、わたし達は武器を下ろした。
最近の魔物は本当に強いな……もう年かな……
「今の、なんだったの……?」
「フォドラの核に何かが起こっているのは間違いなさそうだけど」
「装置が壊れてしまっては、どうしようも出来ませんね」
そう言ってヒューバートくんは真ん中にあった装置を見る。
巨大な姿で存在を主張していたそれは、魔物によって破壊され機能する事はもうないだろう。
貴重な資料が……と肩を落とすが、ソフィは諦めきれないとパスカルに向き直った。
「パスカル、だめなの?」
「う〜ん……あ、そだ!」
何か思いついたらしいパスカルが、近くに倒れていたヒューマノイドから何かを抜き取った。
そのままそれを、まだ壊れていない別の装置に挿入する。
「そのヒューマノイドがどうかしたんですか?」
「機能は停止しても、当時の視覚情報が残ってるんじゃないかな〜?」
あ、そっか。
電池切れまで使った情報は、携帯とかだって残るしね……
一人納得していれば、パスカルの考えは見事に的中したようだ。
映像が浮かび上がって、それが壊された装置を映す……その光の中には、うずくまるようにしている一人の少女。
ちょっとわかりにくいけど、スレンダークール系美少女……だから、さっき花畑で見えた子だろうか?
もっとよく見ようとする前にヒューマノイドの視界が動き、そのまま研究者を……さっき見た片眼鏡の人だ……と車椅子の女性が話している姿を映した。
“リトルクイーンのサンプル。ありがとうございます”
“それが本当に対ラムダへの切り札になるのかね?”
“はい。これでプロトス1は完成しますわ”
“だが焦りは禁物だぞエメロード君。我々は未だにリトルクイーンの存在を掴みかねているのだ”
“このままラムダの生み出した魔物に滅ぼされるのを、所長はお望みなのですか?”
“誰が滅びなど望むものか! だからこうして、君を呼び出したのではないか”
“そのご決断には感謝しております”
“……リトルクイーンの事は、他言は無用だぞ”
“承知しております。皆の不安を煽るような事を、私がするはずがございません”
“フォドラよ。お前の望みはなんだ!”
最後にうずくまる少女を映して、その映像は終わった。
確かに映っていた少女と、そしてエメロードさんの姿に、わたし達は少しの間悩むように沈黙する。
「今のはどういう……」
「ソフィが生まれる前の話だったみたいだね」
「リトルクイーンってのは、核の中にいた女の子の事……でいいんだよね?」
「恐らくは間違いないだろう」
「彼女は何者だ? それに……」
ちらり、ソフィを見る。
マリクさんの言葉をシェリアが引き継いだ。
「雰囲気が、どこかソフィに似ていたわね」
「わたし……知らない」
「一体どういう事なの? よくわからないんだけど」
「リトルクイーンのデータでプロトス1は完成する、とも言っていたな」
「プロトス1……わたしの……昔の名前……」
静かに俯くソフィ。
まだまだわからない事がたくさんあって、どれがわからないのかもわからなくなりそうな……要するに混乱しそう。
とりあえず、リトルクイーンとソフィは、とても近い存在って事でいいんだろうか?
必死に考えを纏めようとしていると、再び地響きが起こった。
ガラガラと崩れるのは、今度は装置ではなく周りの壁だ。
「どうやら話は、外に出てからにしたほうが良さそうですね」
「待って待って! 他のヒューマノイドからもデータを抜き取るから!」
「急いでください!」
慌ててパスカルが他のヒューマノイドに走るとほとんど同時に、わたし達のすぐそばの床が音を立てて壊れた。
何か光がせり上がってくるのを視界の端に感じて、思わず声を上げる。
「今度はなんだ!」
そうしてそこに現れたのは、一人の少女だった。