スラリとした体躯。
柔らかそうな紫の髪は短く、少し乱雑に切られている。
凛々しい瞳に、極力感情を抑えたような無表情。
先ほどは見えにくかったがわかる。
映像の中で、花畑の中で見た姿そのままであることを。
彼女がきっと……リトルクイーンであると。
「この子、さっきの!?」
「君は一体!?」
問いかけに答える気などない、と示すように、彼女はその手に光を集めた次の瞬間、爆発させるようにわたし達に向かって放った。
ヒューマノイド達を弄っていて一人遠くにいたパスカルは無事のようだが、強い衝撃をモロにくらったわたし達は皆一様に倒れこむ。
シェリアが必死に起き上がって、リトルクイーンに向かって言葉を放った。
「待って! 私達は戦う気はないの!」
「シェリア!」
再び光を集中させたリトルクイーンに、わたしは慌ててシェリアを庇おうと彼女を抱き寄せる。
光が放たれる音。
しかし衝撃はない。
恐る恐る目を開くと、ヒューバートくんを除く男性陣が武器を集中させてそれを相殺しようとしているところだった。ヒューバートくんはわたし達を庇うように立っていて、みんながシェリアを助けようとしていたのがわかる。
「下がってろ!」
「アスベル!」
押し返されそうなアスベル達を抜けて、ソフィが勢い良く床を蹴った。
ぶつかるようにリトルクイーンに突進した彼女を見て、リトルクイーンは驚いたようにその身をひいた。
ソフィを見つめる彼女は、もう戦闘の構えを解いている。
「どうして?」
「フォドラの子」
「え?」
「喋れるのか?」
思ったより可愛らしい声で、リトルクイーンはソフィに向かって手を差し伸べた。
その目に、敵意はない。
「おいでなさい」
「気をつけろ、ソフィ」
素早く耳打ちするアスベルに、先ほどまで敵意を宿していなかったはずの彼女は、再び光を放った。
なんとか避けるも、それは天井に当たりガラガラと音を立てて崩れて始める。ただでさえ、先ほどの揺れで壁も壊れてしまったのに。これ以上はもう、建物がもたないだろう。マリクさんは走り出しながらみんなに声をかけた。
「まずい、退避するぞ!」
「あとちょっと〜! よ〜し、おっけ〜!」
「ソフィ、何をしている逃げるぞ!」
ヒューマノイドからチップを取り終えたパスカルが走り出してなお、ソフィはリトルクイーンを見つめている。
慌ててアスベルが引っ張っても、視線だけは変わらないようだった。
最後にわたしも部屋から出ると、走った一歩後ろの床が光る事に気付く。なんだと後ろを気にすれば、そこからレーザーが上に登って放たれるのが見えてしまった。
ああ、これは、急がないとあれに焼かれてしまうやつ。そう気付いて、さぁっと血の気がひくのを感じながら、わたしはなるべく後ろを見ないように走る……だがビームは次第に手当たり次第になり、出口まであと少しという時点では前を塞ぐようにいくつものビームが放たれた。
避けきることなど出来ず、腕に足に頬に焼けるような痛みが走る。
「なにこれ死ぬって!」
「シャトルに乗り込め!」
「ひぇ〜追い付かれちゃうよ〜!」
「ソフィも急いで!」
いくつもの声が上がり、シャトルが見えた辺りで魔物までもが現れた。
最後尾を走っていたわたしの服を僅かにかするそれに、思わず悲鳴が上がる。
「走れ、シオリ!」
アスベルがそう叫びながらわたしを通り過ぎ、魔物を斬りつけた。
襲ってくるそれらを踏み台にして跳ね、降りざまに斬り伏せる。
わたしの少し先で走っていたソフィがそれに気付いて、加勢しようと一瞬足を止めた。
「アスベル!」
「先に行け、ソフィ!」
その声にわたしはソフィを掴んで、一緒にシャトルに乗り込んだ。
それからアスベルを呼んで、同時に動き出したシャトルにしがみつく。
アスベルは魔物をあしらうと、素早く地を蹴って、シャトルに向かって、跳ぶ。
「兄さん!」
「アスベル!」
一瞬、届かないかと思った。
でも、後少しのところでシャトルに掴めず落ちようとしたアスベルの手を、リチャードが掴んだ。
後ろでリチャードを支えるヒューバートくんの踏ん張る声と、がっしりと手を掴むリチャード。
宙ぶらりんのまま、シャトルは原素研究所をあとにした。