色とりどりの花が咲き乱れるこの花畑は、恐らく上空から見たあの場所だろう。
蝶が舞い、小動物も飛び跳ねる景色はとても心が穏やかになる。
今までフォドラで見た生物といえば魔物だけだったから、なんだか余計に新鮮で美しく見えた。
「これほどの環境は、エフィネアにもないよ」
「そうだな」
「ですが、どうしてここだけが花で覆われているんですか?」
「フォドラから出る原素が一番濃い場所なんじゃないかな?」
ふと、奥に黒い影が見える。
……魔物だ。
びくりと体が震える。あの魔物が小動物を襲ってしまうと思ったからだ。
しかし、魔物は小動物には目もくれずにごろりと寝転んでは花畑を満喫するばかりで、小動物を襲う気配がない。
そんな光景にわたしはもちろん、他のみんなも驚いたように息をのんだ。
「魔物が、他の存在を襲わないなんて……」
「一体、どうなっているの?」
驚いて、わたし達も近くに移動する。
しかし、わたしたちに気付いた小動物はもちろん、魔物すら逃げてしまったのを見て首を傾げる。
大人しい個体である、とか、そういう感じでもなさそうだ。
「フォドラの子よ。あなたはわたしとともに来るべきです」
抑揚の無い声が急に聞こえて、わたし達はそちらを向いた。
いつの間に現れたのだろう。そこにはリトルクイーンがいた。
彼女の視線はだが、ソフィにだけ向けられている。
「ひとりになりたくないんでしょう」
「え!?」
「みんないつかいなくなる。それは、とても悲しい」
何もない空間が突然光り出して、そこに三人のリトルクイーンが現れた。
「それは、とても怖い。助けてほしい」
分身が出来るのだろうか? 再び空間が光り出して、再びリトルクイーンが増える。
なんなのだろう。
なんなのだろうか、この状況は。
抑揚のない声のせいか、無機質に増えていく彼女の姿に、ぞくりと背筋が震える。
「不安で仕方がない」
増えていく彼女に、いつの間にかわたし達は囲まれていた。
皆同じように宙に浮き、同じように無表情で、同じように何も言わない。
視線はやはり、ソフィにだけ向けられている。
「救いを求める心を……わたしが永遠に癒やしてあげる」
「え……」
「わたしが……」
「「わたし達が」」
「「「あなたの痛みを」」」
「「「「わたしに変えてあげる」」」」
声が重複していく。
彼女の声が重なって重なって重なって、そうしてソフィだけに、優しい手を伸ばす。
「終わり無き時を、共に生きましょう」