花畑の奥にある森は意外と深く、わたし達は手頃な場所で一休みをしていた。
ソフィが「なんとなく」と方向を示してくれるのだが、なかなか思うようには進めず、なかなかシャトルのある場所へと戻れなくなってしまっているのだ。最初のうちは景色も楽しんでいたけれど……そろそろ飽きてきている。
「……この森、今自分がどこにいるのかがさっぱりわからないわね……」
「つまり、迷ってますね」
はあ、とヒューバートくんがため息。
「時々見えない壁があるようにも感じるね……向こうはあくまで、ソフィだけに来てほしいってことかな」
冷静に現状を分析し始めるリチャードに、だがわたしは面倒だと腰を下ろした。
正直、もう森を見るのは疲れた。可愛い子でも見よう、とちらりとソフィを見れば、彼女はきょろきょろと道を探している。
何故だろう。先ほどからその姿を見ていると嫌に胸がざわつく気がするのだ。なんというのか……そう、ちょっと焦っているような?
ソフィといられなくなるような……また、知らないうちに会えなくなるような。
「どうかしたか?」
マリクさんの声にハッと意識を戻す。
ぼんやりしていたわたしを心配してくれたらしい。
最近、すっかりわたしのお父さんらしくなったマリクさんに、わたしは少し照れくさくなりながら理由を話した。
「……ソフィを見てると、なんかざわざわしちゃう感じみたいな」
「ほぅ……ヤキモチか」
「なっ……んでそうなるんですか」
相変わらずの発想力ですね、と噛みつくように言うも、マリクさんは真面目な顔を崩さない。
ある意味このパーティーで一番のポーカーフェイスな気がしてならない。
「もしくは重ねているのかもな」
「え?」
「あの少女はソフィに永遠を与えるようなことを言っていた。永遠を与えられるということは、同時に何かを永遠に失うということだ。最近、ホームシック気味みたいだからな」
いつもの調子で紡がれる言葉に、わたしはなんて言えば良いのかわからなくなる。
確かに、ここ最近のソフィを見ていて、わたしは元の世界にいる人達の事を恋しく思った。ホームシックになっていたと言っても間違いじゃない。
唐突に終わってしまった繋がりに、後悔をしてももう何も残らないことに気付いたことを、頑張って気にしないふりをしていたけれど……わたしはソフィを、自分と重ねていたのだろうか。
でも、それを指摘されるのは、ちょっと恥ずかしい。
「……わたしもう二十二ですよ」
「パスカルを見ろ。同い年だぞ」
急に大人になんかなれないさ。
ぽすんと頭を撫でる手が大きくて、わたしはアスベルとはまた違う気恥ずかしさに頬が染まる感覚がした。